はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

帝国軍のガントリークレーン

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先日乗船した東京港のクルーズでは、中央防波堤に新しくつくられたコンテナバースの近くを通過した。ああここが40年以上続く領土紛争問題に対して最近都が出した調停案の中でわずかに大田区の取り分とされた場所か、などと無責任に感慨にふけっていたが、ガントリークレーンが見たことがない形だったので、おやや?と首をかしげた。すかさず同行していた友人が、「あれは『シャトルブーム式コンテナクレーン』というもので、羽田空港の空域制限をクリアするために採用された」と教えてくれた。なるほど、中央防波堤は東京ゲートブリッジと同様に空からの制約が形の決定原理になるのだなあと、さらに感慨にふけった。

どうやらこの形式が採用されるのは日本初らしい。その無理のある姿は、すでにガントリークレーンの愛称として定着している「キリン」のイメージから離れて、スターウォーズに登場する帝国軍の兵器「AT-AT(All Terrain Armored Transport:全地形装甲トランスポート)」に近い印象を受ける。白いフレームと青いトラス材で組まれたブームは、どうやら前後に大きく動くらしいね。アップリフトの対策とか、なかなかたいへんそうだ。それはともかく、言葉の響きもかっこいいよねえ。

参考:東京新聞「江東86% 大田14% 埋め立て地帰属 都が調停案」
   三井造船「東京港埠頭株式会社からコンテナクレーン6基を連続受注」

プレキャスト城

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岡山県津山市に宿泊した昨日の早朝、津山城郭の一端にある「津山文化センター」までお散歩してきた。アクの強いこの建物が街中にあったらギョッとするだろうけど、街を見下ろすロケーションにはとてもふさわしいと思ったな。

四面すべてを構成しているプレキャスト・コンクリートのパーツを駆使した張り出しはたいへん感動的だ。どうやら寺社建築に見られる「斗栱(ときょう)」が元ネタらしい。周囲の石垣に負けない造形の荒々しさや繰り返しによる迫力には圧倒されるけど、面取りによって生まれている柔らかさが程よくブレンドされているので、なんとも心地よかった。

川島甲士の設計により1962年につくられたこの建物は、どうやら来年4月から耐震補強工事のためにしばらく休館するようだ。今回のチャンスに内部も見学したかったけど、涙をこらえながら仕事に向かった。そういえば、土木界隈では「PC」と言えばプレストレスト・コンクリートだと思うのだが、建築界隈ではプレキャスト・コンクリートなんだね。いくつかのネット情報を見ていて、あらためて気になったな。

参考:津山文化振興財団ウェブサイト

でかすぎる地形模型

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地形も楽しいけど、地形模型はもっと楽しい。鳥の視点というか、神の視点が得られる気分になるからだろう。ものごとを俯瞰的に眺めて全体像を捉えることができたときは、地形に限らず、うれしさとともに理解を手に入れた気になるもんねえ。

ところが、全貌を把握できないほどバカでかい地形模型が埼玉にある。それは「埼玉県立 川の博物館(かわはく)」の展示施設のひとつの『荒川大模型173』。なんと、荒川の源流から河口に至るまでの延長173kmとその周辺を、1000分の1の大きさでつくっちゃったというワクワク施設だ。山地部は高さが1.2倍で10m間隔、平野部は高さが1.5倍で4m間隔で表現されているらしい。用いられている素材はGRC(ガラス繊維強化セメント)とのことなので、実際の荒川流域の地質に比べると強固な岩盤と言えるね。

起伏が激しいV字谷の山間部はもちろん視覚的に楽しいけど、秩父あたりの河岸段丘が発達している様子、土砂の気分になると解放で満たされる扇状地の様子、遊水池としての機能を有するとてつもない川幅の中流域の様子、人工的につくられた荒川放水路の様子、河口付近の埋立地の様子など、楽しめるポイントが大量にある。たっぷり時間を確保して見に行くことをオススメする。

もうひとつのポイントは、等高線(コンター)で構成されていることだろうね。視覚的にかっこいいってこともあるけれど、より記号的な表現なので、抽象度が高い次元での理解が促される。ここらへんが「腑に落ちる感覚」を強化しているんだと思う。

参考:埼玉県立川の博物館オフィシャルサイト