はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

SF都市

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上海で未来の街を見てきた。あのザハ・ハディドが手がけた、巨大オフィスビル群「凌空SOHO」だ。あまりにも強烈なクセを有するこの空間は、あの手この手でケチをつけようとする人も極めて多いだろう。自分の理解を超えるものに対しては、どうしても警戒しちゃうもんねえ。しかし、良いか悪いか、正しいか正しくないか、好きか嫌いかなんて価値観は、全くつまらんと一蹴されるほどに非現実的な現実空間だった。

日本でもかつて、できたばかりの首都高がタルコフスキーのSF映画「惑星ソラリス」の中で未来都市を演出する舞台になっていた。当時の日本はいまの上海と同じように、世界の未来を手にしていたのかもしれない。そして、それを取り戻すことができないほどに老いているのだろう。

凌空SOHOの中庭で、お昼休みにそれぞれのペースで過ごしている人々が、ついつい未来人に見えてしまった。そんな自分の感覚が、つまらん自己保身に結びつかないようにしていかないとな。

 

上海再訪

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2016年に六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催された「土木展」が、なんと上海に巡回している。オリジナルの展示には僕もそれなりに関与したし、今回の巡回展にも作品をこっそり展示させていただいているので、なんとか現地に見に行きたいと思っていた。ずっとスケジュールを調整していたのだが、どうしても大型連休後半に2泊3日という日程しか残らなかった。むちゃくちゃに高額な旅なんだけど、意を決して、10年ぶりに上海に行くことにした。

10年前の上海訪問時には、生活感に満ちて迷路のように入り組んだエリアを対象地として、散策やヒアリングを行った。あの街はいったいどうなったのだろうかと気になっていたのだが、googleマップではちゃんと表示されず、場所も特定できていなかった。今回の訪問を機に、もし残っていたら再訪しようと「百度地図」のストリートビュー的な画面を見てみたが、なんとすっかりがれきの平坦地になっており、その生々しさに驚愕した。

今回の旅では、ジリ貧の日本を様々な面であっさり抜き去った中国の、ほんの一部を体感したいと思っている。2泊3日しかないけどね。

 

段差の更新履歴

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職場の近所を通る私鉄の切土区間にある跨線橋。鉄道の建築限界をクリアするために、少々無理をしながら路面位置が持ち上げてられている。この様子には事情が積み重なっているような気がして、個人的にはがっちり心をつかまれた。そこで現状を観察しながら、アプローチ部のスロープが歩んできた歴史を妄想してみよう。あくまでも憶測だし、事実を調べるつもりもないけど。

スロープの下端部にはアスファルトがこんもり盛られている。ひょっとすると最初は階段だけでスロープは後から付け足したんじゃないかと思ったのだが、全体の勾配が緩いので当初からスロープがあったと考える方が自然だ。とりあえず、下端部のコンクリートが欠損して、その補修がアスファルトでなされていると解釈しておこう。

次にスロープ上面のテクスチャーの違いもたいへん気になる。中央部はわりと平滑なんだけど、両サイドは洗い出し仕上げのように骨材がむきだしになっている。これは積極的に2種のテクスチャーを混在させたわけではなく、オリジナルのスロープの幅は狭くて不便だったので、両側にコンクリートを盛り付けることで拡幅されたのではないだろうか。既設階段に打ち足すのは締め固めが難しいのか、ずいぶんボロボロになっているし。

そのようにスロープが拡幅されたことで、勇猛果敢にバイクに乗ったまま歩道橋を渡る人々が現れたのだろう。比較的近年に設置されたと思われる危険行為を抑止するための看板や路面が、鮮やかに掲げられている。そして、それでもバイクの進入を抑制できなかったのか、スロープの上下端にラバーポールが設置されている。しかも、路面の「原付」という文字を覆い隠す位置に。結果的に自転車の利便性は、当初の狭い幅員のスロープと同等に戻っちゃっただろうね。

その他にも、なんで壁が傾斜しているのかとか、なんでブロック塀の直前に車止めがあるのかとか、なんで線路の直上に投物防止柵が設置されていないのかとか、気になる点は多々ある。でも、そこらへんも謎のままにしておこう。また観察する機会があれば、その時にまた楽しもう。