はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

2007-01-01から1年間の記事一覧

ノイズリダクション

吊橋の内部景観。 このような長大橋梁を渡るとき、僕は運転しながらも、ついつい周りの風景を眺めてしまう。いつもワクワクして、いい気分になり、感激する。 ところが、その内部景観を写真に撮ってみても、そのドキドキ感は伝わらない。思いのほか、いろん…

イナカモノノヒトリゴト

あらためて言うことでもないけど。東京って、なにもかもがものすごい密度で集積しているんだね。しかも、その範囲がとてつもなく大きい。圧倒されっぱなしで、ちょっと引いてしまう。

抑圧の解放

15年ほど前だろうか。大学の研究室にあった写真集を見て、大きな衝撃を受けた。その写真集には、溶鉱炉の写真がカタログ的に淡々と並べられていた。感情などまったくなく、極めて機械的に、極めて冷徹に。僕はそれを眺めて、激しい感情のブレを味わった。し…

ねじれた関係

田園風景の中にポツンと架けられたあるアーチ橋に近づくと、違和感というか気持ち悪さがどんどん増大する。橋がゆがんで見えるのだ。ちょっとしたワンダースケープである。 その理由は、道路と川が斜めに交差しているために、2つのアーチリブが平面図上で橋…

仇となる厚意

河川橋のコンクリート床板を部分的に張り出して歩道の空間を広げた、いわゆるバルコニー。これらは、快適な眺望・休憩施設を意図してつくられる。確かに橋からの眺めは良いことが多いので、穏やかな日はそこに佇みたくなるだろう。しかし実際は、夏は強い日…

独り立ちした門

そもそも門は、特殊な場だと思う。分け隔てられた内側と外側が門によって結ばれ、そこを通過することで世界が切り替わる。だからこそ、古来から個人も権力者も、門に対して格別のこだわりを持っているのだろう。自分を誇示するものとして。だからと言って、…

汚れを誘うもの

工場の中には、巨大なパイプが張り巡らされている。それを下から見上げてみると、植物や昆虫のような面白い模様を目にすることができる。意図しないアールヌーボーといったところだろうか。この細かい筋は、水が通った道にほかならない。製鉄所などは、細か…

曲げる理由

コンビナートでは、グニャリと曲がったパイプをよく見かける。一直線に伸ばせば済みそうなところでも、一定間隔で曲げられている。効率が悪いような気がしてならないが、もちろん理由があってのこと。これは、熱によるパイプの伸縮を吸収するためなんだそう…

下町の頑固さ

浅草の地下街に通じる階段。かなり怪しげな雰囲気を醸し出しているけど、地上からのメインエントランスだ。たぶん。この地下街、見た目からしてもかなり古い。営業開始は昭和30年(1955年)らしいので、すでに半世紀ということになる。その時期から考えると…

ブリュッケン

前回の橋梁を遠くから眺めると、こうなる。異様にスレンダーかつシンプル。テーパーがついた細い橋脚、ストラットで剛性を高めている鋼箱桁、両端の斜面の保全を実現したケーブルトラス。地味に見えるけど、かなり冒険している構造物だ。実際にこの橋に触れ…

逆さまの斜張橋

ドイツ・アウトバーンのネッカータール高架橋。この写真ではわかりにくいけど、復員は30m、橋脚の高さは120mの巨大な橋だ。10mの張り出し床版を支えるストラットがすてき。渋い配色もすてき。この橋の支間割りは、230+3@134+230。端が長い変則的なもの。普通…

思考停止のストライプ

「まことちゃん」で有名な楳図かずお氏の住宅が話題になっている。氏のトレードマークである紅白の横縞でペイントしたうえ、外観にはキャラクターをあしらうものだそうで、地域住民の2名が「あんな建物は色彩の暴力であり形の暴力」として建設差し止めを求…

市街橋の要素

かつて、「北海道三大名橋」という呼称があった。札幌の豊平橋(T13)、釧路の幣舞橋(S3)、旭川の旭橋(S7)である。豊平橋と幣舞橋はすでに架け替えられ、現役は旭橋のみである。写真はそのうちのひとつ、先代の豊平橋を掲載している札幌市営交通のプリペイドカ…

個人的名橋

僕は子供のころ、3年間ほど北海道の旭川に住んでいたことがある。近所には『旭橋』という鋼アーチ橋があり、日常的に目にして、触れていた。当時、この橋に関する知識は「戦車や路面電車が通っていた」ということくらいしかなかったが、ただならぬ存在感は…

ツタが絡む壁

南国の台北で見かけた擁壁。奇妙なことに、10m間隔で規則正しくツタが生長している。これは、コンクリート構造物の切れ目は湿潤になりやすい事実を、端的に示している。この擁壁は、設計段階でツタの生長を想定していたとは思えない。そもそも、見た目には配…

鋼鉄の天守閣

蘇我駅前の通りは、鉄鋼の街を象徴する景観になっている。“山アテ”ならぬ、“高炉アテ”なのだ。そのことを意識して高炉を配置、もしくは、道路を整備したのかどうかは不明だが、高炉が確実にランドマークとなる印象的な構図が形成されている。この景観を日常…

ザラついたお肌

耐候性鋼材による鉄道トラス橋。耐候性鋼材ってのは、あらかじめ表面に錆を形成させて、それ以上の腐食を防止する鋼材のこと。塗り替えが必要ないため、塗装による防錆処理よりも維持管理の面で優れている。もちろん見た目は錆なので、嫌われやすい。「新し…

リアル・ダンジョン

地下は迷いやすい。その理由はいくつか考えられるが、“迷い”の種になる“戸惑い”が生じやすいポイントがある。 それは、分岐と昇降。 直角や1階層のような明快さがない場合、さらに戸惑いは大きくなる。これが同時に出てくる場面は、なかなかの迫力だ。ゲー…

美しい景観を目指す前に

「美しい景観を創る会」の主張はごもっとも。これまで15年ほど実務や研究なんかで景観に関わってきた者としては、基本的な考え方には賛同する部分が多いし、ありがたいと感じる部分もある。しかし、住宅都市整理公団総裁の大山顕さんが述べているように、…

設計の意図

住宅地の中のコンクリート擁壁。 大きなスリットを組み合わせて面に表情を持たせている。上下に違いをもたせて、壁面を視覚的に分割するといった工夫がなされている。 しかし結果は、少々みっともないことになっている。外観への工夫が逆方向に作用している…

ヌード・ボックス

あまりにも唐突である。平坦地にわけのわからんコンクリートの塊が置かれているのである。その幾何学的形態は、なんとも言いようのない異様さを放っている。これは函渠、もしくは、ボックスカルバートと呼ばれる道路構造物である。この上に土が盛られ、路盤…

見えなかった風景

乱暴な言い方をすると、多くの人は工業の風景が見えない。 なぜなら、多くの人は工業を“悪”として捉えているから。 できるだけ自分から遠ざけたい存在だから。ところが、少々風向きが変わってきた。 そのきっかけは、『工場萌え』(石井哲、大山顕)の出版。…

公共の感覚

1999年のコペンハーゲンの街並み。 よく見ると、空中に道路用の照明灯が浮かんでいるのがわかる。細いケーブルを沿道の建物に直接アンカーして、灯具を吊り下げているのだ。 いままでの日本人の感覚だと、自分の建物に公共の施設を取り付けるだなんて、なか…

つくり方が決める形

“日本最古のコンクリート電柱”が函館にある。 つくられたのは大正12年(1923年)。いまでも現役である。 その断面は、なんと正方形。 なるほど、当時は電柱も場所打ちだったんだね。 型枠は板だから平面になったんだね。 現在のコンクリート電柱の断面は、ド…

内臓建築

このような巨大装置は通常、“建築物”と認識されるように思う。ところが巨大装置は“建築物”ではない。建築物は通常、骨と皮によって“内部空間”を生み出すことが本質である。でも、巨大装置は内部空間の代わりにある“内臓”が本質なのだ。一般にギャップという…

滝になったダム

“ピョウタンの滝”と呼ばれる構造物が北海道にある。天然の岩と人工の平滑面が共存するユニークな姿と、その組み合わせによって生まれた豪快な落水表情から、なんとも不思議な感覚に浸ることができる。 元々は発電用のダム(正確には堰堤)として、昭和29年…

山の中のJCT

首都高から中央自動車道を西進してしばらくすると、高尾山の中に入る。 カーブが多い登り坂を緊張しながら走っていると、巨大な構造物群が忽然と姿を現す。豊かな緑に囲まれたこのジャンクションは、異様な存在感を放っている。 構造物が周辺環境から完全に…

煙のイメージ

工場の装置は、その場にあって動かない。 しかし、その中身は激しくうごめいている。 24時間、年中無休で。 その活動の証は、立ち昇る白煙に見ることができる。 煙と言っても、ただの水蒸気である。 つまり、無害。 かつて、装置が排出する煙は悪の象徴だ…

橋梁的建築物

建築物と橋梁は、もともと近い関係にある。柱≒橋脚、梁≒桁、屋根≒床版というように理解すればいい。空間をつくるか路面をつくるかの違いというように理解すればいい。そうは言っても、1964年の東京オリンピックのときに建設された代々木の第一体育館ほど“橋…

直交の街

現地調査時にはいつも、じっくり地図を見る。地図を見ながら風景を想像する。土地の利用や道路の形状で、なんとなく雰囲気がつかめるものだ。しかし、それがうまくいかない場合もある。サンフランシスコ周辺を広域的に見ると、その海岸線の形状から、いかに…