はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

一点透視の新幹線駅


先日参加した「大人の社会派ツアー:第1章 セメントの道」の集合場所には、山口宇部空港や宇部市内など、様々なピックアップポイントが設定されていた。もともと前日入りするつもりだった僕は、宿泊地や行程などを深く考えることなく、リストの最後にあった「JR厚狭駅新幹線口」を選んだ。なんて読むのかわからない駅名だけど、新幹線が止まるのだから安心だよねえと思ってのこと。結果的に小倉を宿泊地に選び、前夜にもつ鍋を食べながら、何時の新幹線に乗ればいいのかをiPadで調べた。そして、焦った。
ええと、10時集合に間に合うためには、9時に到着する「こだま」になるんですか?次のでは集合時間に間に合わないんですか?なるほど、停車する新幹線が少ない駅なのね。ううむしまった、認識不足だったか。しかたないね、じゃあ在来線で行こうか・・・。ええと、10時集合に間に合うためには、8時半の電車に乗るですか?乗り換え2回、しかもすべて普通列車なんですか?集合の40分前に到着するんですか?ううむ、考えてみると、JR九州とJR西日本は別会社だもんな、そんなに乗り入れは当たり前じゃないんだな、それにしても快速とかないもんなのかね。というか、この駅はなんて読むのかな・・・、ほほう「あさ」って読むのか、なるほど・・・。
ともかく、ツアー当日は朝からかなり低いテンションでスタートした。そして、厚狭駅に到着して、さらにテンションが低くなった。駅前は区画整理されたままで、ほぼ更地。一棟だけある高層マンションと、少し離れたところにある文化会館が、ますます空虚感を強調している。駅前でコーヒーでも飲んで時間をつぶそうかと思っていたのだが、そんな場所は全くない。ため息混じりでトボトボと周辺をうろつきはじめた。
ところが、すぐにものすごく素晴らしい空間を発見し、一気に興奮状態になった。これは、新幹線の高架駅直下の空間。僕が想像していた新幹線駅には存在すらしていない「無」の空間。しかも、ボンデージ・ファッションを身にまとった耐震補強済み橋脚がずらりと列をなしている。さらにその向こうには、なんとも言えない高架下緑化ジャングルを垣間見ることができる。厚狭駅、いいもの持ってるじゃないか、最初に言ってよ。
そんなこんなですっかり舞い上がっていたら、早めに到着したツアーバスに気付かなかった。もちろん、その後のツアーも興奮しっぱなしだったよ(セメントツアー)。遠方からこのツアーに参加される方は、ぜひ厚狭駅もたっぷりお楽しみください。