はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

濃縮された近代産業史

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念願かなってJXTGグループの展示施設である「日鉱記念館」を訪問することができた。結論から言うと、なんでもっと早く来なかったのかと猛省するほどの、素晴らしい場所だった。どんな要素が素晴らしいのかを断言するのは難しい。なぜならば、多方面に及ぶ質が高い展示物が、時代を超越する質が高い空間の中に、狂気を感じるほどみっちりと詰め込まれているためだ。それなのに、無料だし。

まずは本館がえらくかっこいい。松田平田坂本設計事務所による設計で、1985年に完成した。僕も当初はこれ目当てだった。受付では職員の方に日本の近代化の一翼を担った先人たちのお話をたっぷり伺う幸運に恵まれた。そのおかげで、ここ百年間ほどの産業界の関係を垣間見ることができ、その後の興味深い展示物の内容の背景に思いを馳せることができた。

しかし、ここまでではしゃぎすぎないようにしたい。屋外には実際に使われていた2つの竪坑櫓がそびえ立ち、GE社製モーターの巻上機や日立製作所製のかわいい電気機関車などが展示されている。これらもついつい興奮してしまう要素だが、最大の見せ場は駐車場に一番近い「鉱山資料館」かもしれない。

そもそもこの古い建物自体がすごい。物資が極端に不足していた1944(昭和19)年につくられた、木構造によって大空間を実現させたコンプレッサー室をそのまま保存というか使用しているのだ。これ自体の価値もさることながら、その中にある各種機械類の展示や鉱物の展示がまたすごい。その中で最もヤバいのは、まるで銃器がずらりと並んでいるような「削岩機コレクション」であろう。これらはもっと時間をかけてひとつずつ見たいと心から思うレベルだ。

この記念館、民間企業の施設だからこそ成立しているのかもしれないが、だからこそしっかり応援していきたい。記念館に至る道中にある「大煙突」も重要な産業遺産で地域のシンボルになっている。これについては、新田次郎原作で今年の6月から公開されている映画「ある町の高い煙突」を参照したい。公式サイトによると、全国各地の映画館で短期間公開されているようなので、細かくチェックしておこう。

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