はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

室外機鑑賞の履歴

あいかわらず、室外機鑑賞を続けている。出張で札幌を訪れた昨日も、朝のすすきのを散策しながら「室外機コレクション」をいくつかじっくり鑑賞してきた。やはり飲食店や風俗店が凝縮している繁華街は、すてきなコレクションがたくさんあるね。上の写真なんか、一見カオスな配置かと思わせておいて、よく見ると整った印象を与えてくれる、情報の階層構造を意識した展示だよね。それに、写真にある室外機の上にある箱は室外機と思わせておいて、違うものだよね、いったいなんだろう、という新たな疑問が生じた。それはさておき、室外機コレクション鑑賞はあらためて楽しいと感じたので、今後も続けようと思ったな。

僕はいつから室外機を気にし始め、どんな経緯で室外機の見方を獲得し、発信してきたのかと、過去の写真、過去のブログ、過去のツイートなどで振り返ってみた。以下の内容は、完全に自分のためのメモなので、ご注意ください。

 

最初に撮った室外機群の写真は、どうやら2006年11月の上海出張時のものが最初だと思われる。ブログに最初に登場したのは、2008年1月のこと。その頃から群生する室外機を撮り続けており、室外機単体の写真はほとんど見つけられない。上海、台北、シンガポールなどの海外の街では、熱心に探し回っていた形跡がある。

それらの群生する室外機の様子を、「室外機コレクターが収集したものを、壁面に展示している」と見立てて、「室外機コレクション」として位置付けたのは、どうやら2015年2月のようだ。これ以降はハッシュタグを付記したツイートがあるので、履歴を追いやすい。2017年1月にツイートしたシンガポールの室外機群が万を超えるいいねを獲得し、僕以外にも鑑賞者がたくさんいることを理解した。

2018年7月にみずほ情報総研が発行していた企業情報誌「NAVIS」の連載の中で、『街角コレクション3 室外機の展示』を掲載した。これが紙媒体で室外機の見方を提示した最初かな。残念ながら、みずほ情報総研の社名変更の際にサイトが閉鎖されたらしく、現在は記事を閲覧することができないようだ。

2019年11月にフォトブック『室外機コレクション』を制作し、湘南モノレールが主催した「路上探検フェス」などをはじめとするイベント時に、何度か販売した。後の2022年3月には改訂増補版を制作し、書籍『ゲームさんぽ 専門家と歩くゲームの世界』(いいだ・なむ著、白夜書房、2022)の出版に際するクラウドファンディングのリターンとした。こちらは一般販売しなかったが、なかなかのクオリティが出せたと思っている。

2020年6月に出演したライブドアニュースのYouTubeチャンネル「ゲームさんぽ」にて、『ファイナルファンタジー7リメイク』を題材とする『スラム街の魅力は、違法建築と住民たちのDIY精神』『室外機は現代アートなのか? マニアを唸らせた歓楽街の狂気』の中で、室外機コレクションについて解説している。それまでとは全く異なるクラスタの視聴者に、室外機の見方が提示できたことは、僕の中の大きな出来事である。

2021年12月には、書籍『日常の絶景 知ってる街の知らない見方』の第1章第1項「個人コレクションの展示」にて、室外機を取り上げた。ここまでの集大成的な位置付けだね。ここから講演会などで頻繁に提示するようになった。さらに、2023年9月には本書を原案としたテレビ東京によるドラマ『日常の絶景 第2話 勝浦の砂防』の中でも取り上げていただいた。こちらは単体の室外機だけど。

2023年6月には、雑誌『建築知識』の中で連載されているエッセイストの宮田珠己さんの記事『建築ワンダーランド vol.3 室外機のカオス』にて、インタビューをしていただいた。他者の視点が絡むことで、より自分のコンセプトが強化されたように思う。なお、この連載は書籍『宮田珠己の楽しい建築鑑賞』(宮田珠己 著、傍島利浩 写真、エクスナレッジ、2024)として2024年11月に出版された。

 

20年近く鑑賞行為を続けていることには、素直に驚いた。そして、それなりの見方が自分の中で醸成されるには、やはり時間がかかることをあらためて認識した。さらに、室外機ネタはやはり擦りすぎだよなあと思いつつも、まだまだ継続する気力があることに安心した。ものすごく雑にまとめると、「継続は力なり」ってことだな。