はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

若手による設計

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エイボン川の渓谷を跨いでブリストルの街を眼下に眺めるクリフトン吊橋は、156年前の1864年に完成した現役の車道橋。本当にすごいよねえ、僕も大興奮で徒歩と車の両方で渡ったよ。設計者はイザムバード・キングダム・ブルネル(Isambard Kingdom Brunel、1806-1859)だ。この橋の完成は、彼の死後5年経ってからということになるんだね。

この橋の対岸にはビジターセンターがあり、この橋の建設やブルネルの業績などについての展示が行われている。そこで目を引かれたのは、設計コンペで提示された数多くの設計案のパネル。もちろんその内容は極めて興味深いが、よく見ると1829、1830年、1834年など、不採用になったとされる年がバラバラである上に、完成年より30年以上前ということに引っかかった。どうやら、コンペは何度かやり直したようだ。その上、着工直後には暴動が起きて中断したようで、再開されても施工会社が倒産したようで、タワーがようやく完成したのが1843年で、桁や吊り材はコンペ時の設計から改良の手が加えられているようで。紆余曲折がありまくったこの橋の完成は、まさに悲願だったろうなあ。

若干24歳のブルネルがこのコンペに応募した時点では、橋の設計を経験したことはなかったという。その1年ほど前に、父親が主導していたテムズトンネルの現場で起きた出水事故によって、重傷を負ってしまったとのこと。その時に選んだ療養地がたまたまこの場所だったのは、なんという偶然だろうか。この橋の建設が滞っている間のブルネルの活躍はすさまじく、グレートブリテン鉄道の各種構造物、機械類、駅舎の設計や施工のみならず、大西洋横断汽船の建造にも注力している。53歳で生涯を閉じた人生は、ずいぶん慌ただしくもドラマチックだったんだなあ。