はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

沼の縁にて

先月末、学生時代に使っていたマニュアルレンズを試してみようかと思い立ち、自分のカメラに取り付けられるようにするマウントアダプターを入手した。CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4 という標準レンズで、格安でボロボロの CONTAX 139 Quarts を手に入れたときに付属していたもの。ネットで調べてみたら、おそらく1975年発売のAEJというタイプのようだ。

学生から会社員の頃までたびたび使っていたが、上手く使いこなすには至らなかった。カメラというメカは好きだったものの、写真に向き合う真摯な姿勢が足りなかったのだろう。それは、フィルムカメラの撮影・現像・プリント・鑑賞で生じるタイムラグによるフィードバックの不足と、ランニングコストに起因する経験量の不足を乗り越えられなかったためかもしれない。

なにはともあれ、20年以上の時を経てこのレンズを装着し、近所をたびたび徘徊してみた。そうすると、想像を上回って得られることがたくさんあり、写真や撮影との向き合い方があらためてスッキリしつつあるので、ここにメモを残すことにした。いまさら感がひどいが、以下に箇条書きで羅列する。

・ピントが合っていれば、とても素晴らしい描写をするレンズ
・マニュアルでのピント合わせは難しく、最初のうちは失敗写真を連発した
・ピーキング表示や拡大表示など、現代カメラのアシスト機能を使うことで問題は簡単に乗り越えられる
・F1.4のボケ感が生み出す魅力の一端を垣間見た
・絞り値によって、写真の雰囲気が変わることをあらためて実感した
・写真関連の記事によくある表現(絞り開放では滲む、パープルフリンジが発生する、少し絞ると解像感が増す、など)が、ようやく具体的に理解できた
・写真関連の記事によくある「作例」という概念が理解できた気がする
・一回のシャッターを、考えながら丁寧に押すようになった
・いつもよりもフォーカスと絞りの操作のため、必然的に時間がかかる
・いつもと違う撮影のテンポになるためか、現場で被写体を咀嚼しようとする態度に気付いた
・フィードバックが即時可能なので、練習次第ですぐに上達するし、テンポも上がりそう
・練習を繰り返して、徐々に上手くなっていく過程は、やはり楽しい
・写真も基礎練にかける時間が不可欠という事実をあらためて認識
・操作の上達と表現の上達は、密接に関連する
・表現手法の引き出しは、使うか使わないかにかかわらず、多い方が良さそう
・カメラの仕組みを再認識するには、マニュアル縛りは有効かもしれない
・たまにオールドレンズ使用を挟み込むことは、感覚の調整に有効な気がする
・被写体の選び方は、早々には変わらない
・自分はやはり、基本的にはカリカリに解像したコントラストの高い写真が好きなのかもしれない
・オールドレンズ沼にはまる気分がわからないでもないが、今のところ入らなさそう
・酷暑の中のまち歩きは、どうしてもボーッとしてしまうので、マニュアル操作は避けたい

ついでに、現時点までの機材関連をまとめておく。昨年末に僕が購入したカメラは SONY α7CII という、フルサイズセンサーを持ちながらもコンパクトなやつ。レンズはあれこれ悩みながら、だんだん形ができてきた。日常は小型軽量な単焦点レンズ、出張などのイベント時には超広角ズームレンズと超便利ズームレンズによって巨大土木構造物に対応できるようにする体勢。後者はレンズが重くなってバランスが悪かったのだが、ボディ下部にエクステンショングリップをつけることで解消した。コンパクトさをスポイルしてしまうことには、大いに抵抗感があったのだけど。以前に比べると画素数が大幅に増えたことで、トリミング上等の姿勢がより強化された。