はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

治水ヒーローたち

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このたびの台風19号で被災されているみなさま、謹んでお見舞い申し上げます。現時点でも収束できないばかりか拡大する状況も多々ありますが、早期に安心が得られるよう、心よりお祈り申し上げます。また、台風15号の被害を受けてさらなる苦難に直面しているみなさま、一日でも早く平穏な日常が取り戻せるよう願っております。そして、復旧や支援の活動に取り組まれている関係者のみなさま、どうかご安全に進めてくださるよう応援しております。

今回の台風被害は、あまりにも広域かつ多種に及んでいる。報道やSNSなどで伝えられる情報を理解しようにも動揺の方が先行してしまい、この2日間は基本的に外出していないにも関わらず、やけにグッタリしている。特に当日の夕方以降に続々と報じられたダムの異常洪水時防災操作(緊急放流)や浸水などの情報は、本当に「これまで経験したことがない」状況のように感じた。

そこには、これまで日本が蓄積してきた治水インフラが総動員されているような印象があった。ダム、河川、遊水池、調節池、放水路、防潮堤、防潮水門など、いろんなタイプのスーパーヒーローたちが次々と最強の敵に挑み、刻々と変化する条件や時間的制約の中で一進一退の攻防を繰り広げていた。しかも敵も味方も登場する全員が自身の存在や役割への苦悩を抱えているという、まさしくアベンジャーズのような展開。きっとまだまだ先の読めない続編があるだろうから、すぐに気を引き締めておかないとな。

少々不謹慎な言い方だけど、個人的な推しメンである「荒川放水路」が現時点でも耐え抜いていることを、誇らしく思っている。隅田川の水位上昇を防ぐため、夜9時頃に上の写真にある岩淵水門のゲートが閉じられ、全ての水を荒川放水路が受け持ってからの展開がすごかった。なにしろ上流のダムが異常洪水時防災操作を予告していたし、荒川水系を含む東日本全域の河川で次々と氾濫危険情報が出されていたし、実際の浸水被害の報告も上がってきたし。東京の下町低地はいったいどうなってしまうのかとヒヤヒヤしながら、ヒーローたちの連係プレーを垣間見つつ、消耗したまま眠りについた。そして翌朝、堤防決壊による氾濫が他の地域で多数起こっていることに愕然とした。

ちなみに、もともと暴れ川だった荒川は、利根川とともに過去に何度も流路が付け替えられてきた。もちろん江戸および東京の防災および都市機能強化のために。その決定打として登場したのが、1911(明治44)年に着工して1930(昭和5)年に完成した荒川放水路という人工河川だ。あ、写真の岩淵水門はさらなる機能強化をすべく1982(昭和57)年につくられたもの。荒川放水路の役割や開削の歴史などにも熱いストーリーがあるので、国土交通省関東地方整備局荒川下流河川事務所などのサイトをぜひとも参照していただきたい。治水システムの全体像をつかむのはなかなか難しいけど、このような災害をきっかけに、税金の使い道に関する知識を断片的にでも仕入れておくことは、決してマイナスにはならないだろうね。もちろん現時点で起きている災害の収束が、何よりも先なわけだが。