はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

埋立地の新しい街

僕が学生だった1990年頃、幕張新都心はまっさらな埋立地に突然たくさんの高層建築が生えた、不思議な街だった。その頃はまだ居住区が整備されておらず、そこかしこに空地が目立つ状況だったように思う。自分の卒論では、キロの単位で視距が確保できたこのエリアで実験を行ったことを記憶している。このエリアをあらためて復習してみよう。

千葉県の東京湾沿岸は1960年代後半から盛んに埋め立てられ、かつて遠浅だった海岸線はそのほとんどが広大な平地に姿を変えた。幕張新都心は1980年に造成が終了したエリアに立地しており、大学の誘致を核とする学園都市構想、大企業の本社機能の移転などを目指した副都心構想を経て、「職・住・学・遊」が融合した未来型の国際都市をコンセプトとする都市づくりが行われてきた。中でも槇文彦が設計した日本初の複合コンベンション施設「幕張メッセ」や、住民参加による街づくりやヨーロッパを模した街路景観の集合住宅群でブランディングに成功している「幕張ベイタウン」が有名だ。バブル経済崩壊の影響が直撃したことで、見込まれていた発展が頓挫していた時期が長かった。しかし近年、東京への都心回帰の流れが一段落したことや大型店舗の出店などによって、独自のバランスを内包する成熟した街が形成されてきた。

ざっくりまとめると、こんなところだろうか。ずっと生まれたばかりだと思っていた街も、もう30年も経つんだなあと、なんとも言えない心境になった。