はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

更新を続ける都市

コンコルド広場ではアーバンスポーツ、エッフェル塔の前ではビーチバレー、グラン・パレではフェンシングやテコンドー、アンヴァリッドの中庭ではアーチェリー、セーヌ川では開会式やトライアスロン。文字通り都市そのものを舞台としたパリオリンピックは、これまでの概念を覆して新たな規範を生み出そうとする気概が感じられる。そして、多様性や持続可能性などの現代的な問題を取り込みながら、パリという都市が積み上げてきた格別な魅力をさらにアップデートさせているように思う。

パリは文化芸術の中心地の地位を確立し、維持してきた。それは、自由や創造の価値を尊重しながら、絶えず異文化を取り入れて更新していく姿勢に支えられているんだろうな。ピカソ(スペイン)、シャガール(ロシア帝国、現ベラルーシ)、モディリアーニ(イタリア)、藤田嗣治(日本)などのエ・コールド・パリの芸術活動を受け止めているところなんかは、とても顕著な例だよね。

パリのシンボル的な建造物を外国人に任せる寛容さにも、覚悟を感じる。たとえば、イオ・ミン・ペイ(アメリカ)によるルーヴル・ピラミッド、レンゾ・ピアノ(イタリア)とリチャード・ロジャース(イギリス)によるポンピドゥー・センター、SANAA(日本)によるサマリテーヌ百貨店のリノベーションなど。きっと多くの反対意見に揉まれてきたんだろうね。

今回のパリオリンピックも、パリ市民をはじめとして世界中から否定的な意見も数多くあるだろうが、それらを乗り越えて実際に開催にこぎ着けた関係者には、素直に頭が下がる。そんな意味でも激しい反対運動や取り壊しの危機をくぐり抜けたエッフェル塔は、まごうことなきパリの象徴なんだろう。

上の写真はセーヌ川の観光船から眺めた風景。過去に訪問した際の写真をぼんやり眺めながら、外国勢にたびたび支配されながらも独自の文化をつくり上げてきたパリに思いを馳せ、その重厚な歴史と未来への強い意志を妄想してしまった。