はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

時代をつくった橋

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世界中の国がその往来を閉ざしているいま、ほんの3ヶ月前にイギリスに行ったことが、はるか昔の夢のように思えてくる。でも確かにブルネルの偉業を見てきたんだよな。

そのブルネルを含むイギリスの土木技術者は基本的に経験主義的な解き方をしており、そのことをエッフェルは否定的に見ていたようだ。そして、理論と計算から構造物を軽く、安く、強く、信頼できるものにしていったという。その象徴が、パリのエッフェル塔が完成する5年前の1884年に架けられた、現役鉄道橋のガラビ橋だね。

軽量なトラス桁を支持する三日月型アーチの基部にヒンジを用いることで経済性を高め、風荷重に抵抗する裾広がりの三次元的な造形になっている。強弱のある錬鉄の部材で全体が構成されており、見事な工芸品のような繊細さを併せ持つ、装飾に依らない新たな構造形態が実現した。

いや、なんでこんな話をし始めたかというと、つい先日送った文章を書くために、あらためてビリントンの「塔と橋 構造芸術の誕生」を読んだので。やっぱりこの本、すごくいいな。一般書では全くないけれど、産業革命以降の技術史の読み物として楽しめるよ。

塔と橋―構造芸術の誕生

塔と橋―構造芸術の誕生