はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

愛される白いアーチ


前回に引き続き、マイヤールが設計したサルギナトーベル橋。1930年につくられたこのコンクリート橋は、アーチのスパンと谷の深さがともに90mというかなり大きな規模の3ヒンジアーチ構造で、幅員は3.5mと狭い。鉄筋コンクリートという新しい材料の可能性を一気に切り開いた、技術史的に重要な構造物だ。しかも、ものすごくかっこいい。
すれ違いすら困難なぐねぐねで急勾配の山道にある橋なのに、ちゃんと街道からの案内標識もあり、駐車スペースや仮設トイレやベンチのある複数の視点場が用意され、構造や施工を丁寧に説明するパネルも橋詰めにある。また、コンクリートの表面は丁寧に塗装されている。個人的にはオリジナルの表面が見られなくて少々残念だったけど。
それに実際に訪問者もたくさんいた。自転車ツーリングしているグループ、ハイキングをしているグループ、デートしている若いカップル、ドライブの途中で立ち寄ったのであろう老夫婦など、ひっきりなしに人が出入りし、それぞれの時間を過ごしていた。俺たちの国には素敵な橋がたくさんあるんだぜ、他のマイヤールの橋は見に行ったのかい?(意訳)、と自慢していた自転車乗りは面白かったな。記念写真を撮ったり撮られたり、こちらも楽しく参拝することができた。
このように地元の方々に愛されて大切にされている構造物に接すると、自然と心がうきうきするね。もう、うれしくてうれしくて。多少無理してここまで来た甲斐があったよ。