はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

雪の日曜日

昨日の日曜日は、なかなかヘビーな一日だった。職場では学生たちの集大成を展示する『卒業研究展』の最終日であるとともに、解散から極めて短い期間で今後の日本の方向を決定づける衆議院選挙が行われた。そんな状況だったので、投票所入場券が届く前のギリギリのスケジュールで期日前投票を済ませていた。

そして、僕が住む千葉でも結構な雪が降った。もちろん日本海側の豪雪とは比較にならない程度なわけだが、まあいろんな心配事が噴出したよね、投票率も含めて。降雪によって電車のダイヤは多少乱れていたものの、特に大きな問題はなく職場に到着できた。自分の職場から外を眺めてみると、一瞬だけ陽の光が差し込んだ。芝生広場が姿を変えた雪原には、樹木から伸びた影。普段とは全く異なる眺めに、少しだけ癒やされた。

夜になって諸々の仕事を終えて、ボロボロの状態で帰途についた。最寄り駅で降りたものの、空腹と疲労のためにそれ以上進めず、近くの牛丼屋に立ち寄らざるを得なかった。あまり味覚を感じないままに、エネルギーの補給はなんとかできた。ところが、ようやく食事を終えようかというタイミングで、なぜか店内が停電してしまった。道行く人々が不思議そうに店内をのぞき込んでいたが、店員さんたちもお客さんたちも全く動じることはなく、僕自身も道路からの明かりを頼りに食事を終えた。しかし、システムがしっかり構築されているであろうレジが全く動かず。店員さんに頼み込んで、どうにかおつりを工面してもらって緊急用千円札で会計をさせてもらい、自動ドアを手動で開けて退店した。いったい、なんの罰ゲームだったのだろうか。

眺望体験装置

尾道にある千光寺頂上展望台「PEAK」に行ってきた。2022年に完成したもので、延長63mもの直線空中デッキを有している。つまり、完全な歩道橋なわけだ。これがえらくかっこいい。過剰なまでにシンプルさを追求した桁断面、軸方向と直角方向にそれぞれ踏ん張る三角形の鋼製橋脚、定着部が埋め込まれた透過性の高い高欄のおさまり、その方向へ視線を誘導する反対側のマッシブな壁高欄、なでなでしたくなるコンクリートのミニマルな仕上げ。いろいろな点で、予想を超えてきた。

その中でも最も感激したのが、パノラマ眺望のシークエンス。もちろん、展望デッキから見下ろす尾道水道や尾道の街並みという風景コンテンツ自体が優れているということもある。しかし、大きなカーブを描く階段を移動することで次々と移り変わる風景には、大興奮した。登った先にある長いデッキも、どうしても端から端まで歩いてみたくなる。風景体験の演出装置として、とても素晴らしいものだった。

尾道から今治方面へは、しまなみ海道を通って南下することができる。3連吊橋の来島海峡大橋を見下ろす絶景が楽しめる「亀老山展望台」も素晴らしいので、これはもう展望台ツアーが成立するのではないだろうか。そのためにも、かっこよくて眺めのいい展望台をもうひとつくらい見つけたいなあ。

そういえば、この展望台を設計した「AS」という建築設計事務所は、もともとは青木淳氏の事務所だったようだ。青木淳氏が携わった熊本の山奥に架かる「馬見原橋」は、ずいぶん前に見に行ったことがある。僕が言うのもおこがましいし、少しアレな言い方になってしまうが、日本の有名建築家が手がけた橋としては、珍しくいいものだと思った記憶がある。

細長い漁港

出張先に向かう新幹線の車中、Googleストリートビューで今治市内を徘徊していたところ、海岸線にとても気になる道を見つけた。護岸直角方向に船がみっちり停泊し、道の反対側には全く脈絡がないロゴや屋号がつけられたコンテナや、なにかの資材というか端材や、プレハブ小屋や、自動販売機などが、とりとめもなく乱雑に置かれている。それが延々と続いている。なんとも不思議な佇まいの道である。もしかすると道路ではなく、やたらと細長い漁港なのかなあと思い、実際に訪れてみたくなった。ということで出張後に時間ができたので、今治市街地散策の最終目的地として、現地を訪問してみた。

一般的な道路とダイレクトに接続しているものの、このエリアの入り口には「港湾区域 つり禁止」と明確に書かれた看板があり、ものすごく緩やかに仕切られていた。そして雰囲気は、明らかに漁港のそれだった。雑然としながらも、穏やかな空気感。おそらく漁の時間帯は活気に溢れているのだと思うが、僕が訪れたのは午後1時を回っていたので、ほとんど誰もいなかった。

住宅の前には防潮堤らしき壁面があり、なんと立派な石積ではないか。その天端には、さらに大柄の石材が使われている。これがかなり長く連なっており、漁港と住宅エリアをバッサリ分断している。しかし、随所にコンクリートの階段が設置されているため、歩行者については往来が確保されている。天端のスペースには、物干し竿がDIY的に固定されているなど、生活感が満載。もうこれは立派な文化的景観なのではないだろうか。北側には来島海峡大橋を望むことができたし、満足感の高い散歩になったな。