はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

ただならぬ体育館

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先日の佐賀訪問時には、数時間の時間を確保してまち歩きをした。街の中を縦横に走るクリークを中心に見て回っていると、遠くにギザギザした不穏なシルエットが見えた。直感的にこれはヤバいものだとググッと心を掴まれて早足で近づいていくと、折板構造の壁面と吊り構造の屋根を持つ「市村記念体育館」だった。

圧倒的なブルータル感に興奮しながら外側を鑑賞していると、そりゃ内部も見たくなるよね。時間が残り少なくなってきたなあと思いつつも事務室を尋ねてみると、たいへんウェルカムな雰囲気で迎え入れてくださった。有名な建築家によるものなんですか?などとのんきに聞いてみると、坂倉準三の設計だという。しかもリコーの創業者である市村清が私費を投じて寄贈したものだという。ああ自分はなんて不勉強だったんだろうと思いつつ、ワイルドな外見とはずいぶん印象が異なる魅力的な空間のフォルムにうっとり。舞台裏の楽屋やそこで今も使われているオリジナル椅子なども見せていただき、これまで大切に使われてきたことを随所に感じられた。

帰りの飛行機の中でツイートしたところ、来月より改修工事のために閉館するという情報をいただいた。いやもう、本当にラッキーだったんだな。来年3月からはイベントの会場として使われるとのことだが、その後の活用は未定とされている。今後も末永く使われていってほしいね。

参考:佐賀新聞の記事