はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

2015-01-01から1年間の記事一覧

モーゼの奇跡の顛末

僕が2011年にオランダを離れてすぐに話題になった(ArchDiaryの記事)濠の水面の下を歩く体験ができるという「モーゼ橋(Moses Bridge)」を観るために、西ブラバント・ウォーター・ラインのFort Roovereという稜堡を訪問した。なんで僕が住んでいるときに完…

道半ば

東日本大震災の津波によって、信じがたいスケールの被害を受けた陸前高田。まるごとなくなってしまった街を再生するための高台造成工事が、現在も粛々と進められている。そのための大量の土砂を素早く運ぶためにつくられた仮設のベルトコンベアが、本日で引…

バカっぽい浮き橋

オランダ南部にあるベルヘン・オプ・ゾーム(Bergen op Zoom)という港街は、軍事戦略的要衝だったようで、星形要塞の名残がある。そのひとつが18世紀初めにつくられた「Ravelijn op den Zoom」という堀に囲まれた稜堡。1930年に木橋がひとつ架けられたが、…

つぎはぎの精鋭

またしても砂防の聖地である「立山カルデラ」を訪問する機会を得た。幻の村「水谷平」に向かうトロッコから見える常願寺川では、各種の砂防工事が延々と行われている。その中でも目を引いたのが、以前に被災した堤体を再利用して継ぎ足した、なんとも一体感…

未来的バイザーゲート

先月中旬にどなたも誘うことなく催行した『オランダのドボクを見に行こう』ツアーでは、いくつか見ておかなければならない物件があったのだけど、その中でも最も訪問を切望していたものが二連のバイザーゲートを有する「Stuwcomplex Hagestein」だ。日本名は…

緑化エクスキューズ

沼津で見かけた駐車場。溶融亜鉛メッキのスチールで構成された簡素なつくりだけど、2階デッキのプランターをベースにしながらつる性植物で緑化しようとしている。しかも垂直ではなく、「ランダム」に見えるラインで。それらは、あまり生長していない。 右側…

巨大ちくわ

キューブ・ハウスなどの少々イカレたダッチ建築が密集するロッテルダム・ブラーク駅に、新たなびっくり建築が加わった。高さ40m、幅71m、長さ114mもの巨大な半身の「ちくわ」である「マルクトハル・ロッテルダム」だ。昨年のお正月に行ったときにはまだ完成…

どこまでも人工空間での生活

アムステルダムが面するアイ湖(IJmeer)は、もともとゾイデル海(Zuiderzee)だった水面を、締め切り大堤防・アフスライトダイク(Afsluitdijk)によって淡水化した「人造湖」だ。その中に、アムステルダムの土地不足を解消すべく「人工島」を構築し、そこ…

取り外しが可能な橋

8月19日から23日までの期間、アムステルダムでは5年に一度の帆船まつり「SAIL AMSTERDAM 2015」が開催されている。まったく偶然のことだが、僕がアムステルダムに行った予定とビタッと一致してしまったために、様々なトラブルの元凶になったとともに、滅多に…

要塞ホテル

「ヨーロッパのドボクを見に行こう」という本をつくって広報活動をしていたら、当然のごとく自分がヨーロッパにドボクを見に行きたくなり、いてもたってもいられない状態になった。なので現在、またまたオランダを訪問し、再訪地を中心にしながらも新規のネ…

ドボク遊具

新潟県妙高市にある「万内川砂防公園」に、強烈な魅力を放つ遊具があった。砂防堰堤の水通しを模したと思われるジャングルジム複合すべり台だ。ここでドボク情操教育を受けて育ったこどもたちは、きっと日本の国土全体を俯瞰的に捉えられるようになるだろう…

パリの覚悟

凱旋門から見たエッフェル塔の写真は、いろんな場面でしょっちゅう使っているので、このブログにも載せているもんだとばかり思っていたが、まだだったようだ。(追記2015.8.10:写真は2013.10.12「景観を破壊する建造物」に使っていた。エッフェル塔の名前と…

丹下団地の使われ方

香川県高松市にあの丹下健三が手がけた「県営一宮団地」は、至る所にあるナナメのラインや配置がものすごくかっこいいよ。建物自体のフォルムもステキなんだけど、その建物でズバズバ切り取られた表情豊かで贅沢な空間がたまらないんだよな。 それはともかく…

くぐって越えて

先日、産業技術大学院大学に行く用事があった。関係者に千葉からのアクセス方法を訪ねると、品川の南にで少し行きにくいとのことだったので、若干ためらっていた。直前になってから地図で周辺を確認すると、特に物流系が極めて魅力的な湾岸エリアであること…

リエージュの大階段

2020年東京オリンピックのエンブレムの件で、いきなりフィーチャリングされているベルギーのリエージュは、地形の変化が楽しい街。魅力的な坂がそこら中にある。さらに、カラトラバによるリエージュ=ギユマン駅やグレイシュによるPays de Liège橋などの見ど…

“a”という歩道橋

大阪の天王寺駅前にかかるペデストリアンデッキ『鮨屋萬助・阿倍野歩道橋』は、なかなかファンキーだった。ネーミングライツによる名称、既設橋の解体が絡む複雑な架設計画、レベルが異なる周辺の建物との接続、線形や幅員が変化する桁と複雑な形状の屋根が一…

大阪ドボク探訪

10日ほど前、大阪の阪神高速の高架下にあるイベントスペース「Loop A」にて、『どぼくカフェ』というイベントに登壇させていただいた。お堅いイメージの「土木」を多様な切り口から楽しみ、かつ、窓の外に向けてスライドを投影して一般の通行人の興味も刺激…

東京地下迷宮

NHKで7月20日に放送された『ブラタモリ スペシャル』で、東京駅周辺の巨大地下空間が取り上げられた。濃度も深度もあるみっちりした内容で、視聴しているだけでワクワクドキドキした。 番組の企画を進めている段階で、スタッフのみなさんと半日かけてフィー…

陸送訓練機

4年前の7月14日から数日間、うっかりパリに滞在してしまった。なぜうっかりかと言うと、その日は「革命記念日」、いわゆる「パリ祭」だったためだ。つまりフランスのプライドの源泉たる「自由」を獲得した日だ。当然のように大群衆に巻き込まれ、身動きが取…

親水性

出版記念トークイベントのために、大量の写真を仕込んでいる。その作業の中で、オランダの親水性を示す写真をいくつかピックアップした。ユトレヒトの運河の写真をあらためて見ても、その寛容さには目を疑う。日本ならばここまで水際に接近させないばかりか…

異質な存在

都市の中には、異質さを禁じ得ない施設がたくさんある。例えば、巨大駐車場や物流倉庫や各種タンクなんかがそれに該当する。僕はそれらをなんとなく気にしていたのだけど、あらためて自分のアルバムを振り返ると、なにかのついでという状況で、かなりたくさ…

下調べが大事

エッフェルが設計した三日月アーチの鉄道橋「ガラビ橋」を見に行く際、比較的近くに「グランヴァルダム(Barrage de Grandval)」という風変わりなマルチプルアーチ(例えば豊稔池堰堤がこの構造形式)のダムがあることを知った。ほかにもいろいろと見に行く…

言語化が難しい解き方

当然のことながら、『ヨーロッパのドボクを見に行こう』に収録できなかった物件が多数存在している。検討しながら涙を流してカットしたものは、ブログやら講演のスライドやらで紹介することで供養する場合も多い。それでも極めて残念な気持ちを持っているの…

新規廃墟のその後

オランダのマーストリヒトの近くをかすめるベルギーのアルバート運河に架かる、ローラン・ネイの手によるユニークな橋梁「Vroenhoven橋」については、過去記事(移動しまくり)で触れた。橋梁本体の竣工年は2009年だが、2011年時点では周辺の整備が済んでい…

吊られるリング

オランダのアイントホーフェンの町はずれに、ホーフェンリング(Hovenring)という円形自転車専用橋がある。僕がこの街に住んでいた2011年にはまだできていなかったので、昨年のお正月のオランダ旅行の際に、強引に行程にねじ込んで見に行ってきた。 70mのタ…

耳より情報

先日上梓した書籍『ヨーロッパのドボクを見に行こう』は、とてもありがたいことに、多方面から好評をいただいている。多くの方々は、あきれるほどのみっちり感とドボク愛に若干引きつつも、「面白い!」「すげえ!」「かっちょいい!」など興奮気味のコメン…

ロールプレイング分水工

大型連休に秋田を訪問した際、かつて設計に関わっていた「角館バイパス」という道路をじっくり見てきた。バイパスなだけに市街地からは少し離れていたので、連休の有名観光地なのに混雑とは無縁だった。もちろん有名な武家屋敷通りにも人ごみにビクビクしな…

後付けの将来対応

数日前、習志野市の埋立地を歩くフィールドワークに参加させていただいた。この付近は自分の職場の近くであり、いつもは車で往来しているエリアだ。つまり、歩くことはほぼ初めてと言ってよい。 スタート地点のJR京葉線・新習志野駅を出てすぐ、同行のメンバ…

欧州ドボク本

例の書籍、出版されました!! 未入手の方は、この際にぜひ!! 早々にネットショップでご予約いただのに、まだ届かないという方々も多数おられるようで、とてももどかしい。でも、入手したことを喜んでくださっている方々の声とともに、本に対するうれしい…

旅行衝動

海外旅行を促すためのガイドブックをつくっていて、なにが一番たいへんだったというと、旅行に行きたい気分との戦いであった。特に終盤の「モデルコース」を組み立てているときがつらかった。自分が行く気持ちで、全力で調べて、全力で組み立てたためだ。 も…