はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

2015-01-01から1年間の記事一覧

住宅地の中の油田

大型連休には秋田に行ってきた。旅の直前になって、秋田のドボク的見どころってなにかなあと思い調べていたところ、「現役の油田」という文面を発見し、油田なんて見たことがないよ、これは行かねば!と急激にテンションが上がった。 そこは「八橋(やばせ)…

セクシー網タイツ

博物館の王様と言えば、大英博物館だろう。古今東西のアーカイブの充実っぷりは、想像をはるかに超えていた。各種の侵略を繰り返しながら略奪してきたものだろう、という側面も窺えるが、ここだからこそしっかりアーカイブされているという厳然たる事実も目…

後付けの屋根

大英博物館やルーブル美術館をはじめとする欧州各地の古いゴージャス建築では、その中庭に後からガラス屋根を設置することで、天候や季節に左右されない内部空間として活用することが増えてきた。しかも、その屋根構造そのものがひとつの見どころとして成立…

環境の中で理解する造形物

クリスチャン・メンが設計したガンター橋。ケーブルをコンクリートでラッピングした形式は、斜版橋と呼ばれている。いろんなところで写真を見ていたけど、斜版と桁が一体となった側面がのっぺりしていて重鈍な印象があり、正直なところ、それほど好きではな…

ヨーロッパのドボクを見に行こう

少し気が早いのだけど、あまりにもうれしいので、うっかり告知しちゃいます。 このブログにも多数アップしている欧州ネタをギュギュッとまとめて、6月2日3日に自由国民社より立派な書籍として出版されます。なんとオールカラーの144ページ、税込2,484円。こ…

変態団地

昨年の夏にシンガポールに行った際、あまりのコンテンツの多様さと濃度にまいってしまった。うっかりブログに残していなかった物件がまだまだあるのだけど、これだけはさっさと書いておくべきだった。オランダを本拠地とする建築設計事務所のOMAによる変態団…

東北の美ダム

かつて秋田市の発展を支えた水源地の藤倉ダムは、1911(明治44)年から使われはじめて、1973(昭和48)年に引退した重力式コンクリートダムだ。堤体の直上に架かるトラス橋や右岸側の岩をぐるりと迂回する放水路などの周辺施設も現役当時の姿のままに残され…

日本のオランダ

今年の大型連休は、秋田に滞在した。かつて自分が設計に関わっていた橋梁や道路を巡るとともに、この地に根を生やした大学の同期に会うためだ。各所で素晴らしい体験ができたので、すっかり秋田ファンになってしまった。 その際、いつか訪れたいなあと思って…

美しい汚れ

先日、「錆っていいですよね」と若い方に言われたので、調子に乗ってそのメカニズムや美しさについて熱弁をふるったところ、ドン引きされるに至った。まあそれはいつものことなので許容する(していただく)として、どこかで見た錆汁がらみの素敵な汚れを思…

位置の特定

偶然に出会った対象物の写真の場合、後から見返したときに撮った位置を特定することが困難なことがしばしばある。そんなときに、心強い味方になるのがGoogleストリートビューだ。前後関係からある程度のエリアに絞り込み、なんとなくの地形や道路線形などを…

新しい廃橋

スイスを流れるローヌ川に架かる歩道橋。シエルという街の工業団地付近にある。正式名称がよくわからないので、Structuraeに倣って「イル・ファルコン歩道橋」と呼んでおこうか。1998年完成とのことだが、2011年の夏に訪問した時点でもまだ使われていなかっ…

ゆるキャラコーデ

先日、ベルギーの運河エレベーター「ストレピ・テュー・ボート・リフト」の写真を真剣に眺めていた。これは、船を浮かべた巨大なバスタブを昇降させて、73mの水位差を解消してしまうという、びっくり水運インフラ施設だ。最上部にある機械室は、ガラス越しに…

欧州の大きな谷

欧州の谷って、日本の谷のイメージとはだいぶ雰囲気が違う。簡単に言ってしまえば、スケールの違い。日本の場合は極めて繊細かつ急激に変化する微地形が絶え間なく表層を覆っていることに対して、欧州の場合は広大な丘陵地と幅の広い谷がゆったりと繰り返す…

ローマン・インフラ

ローマの繁栄はインフラ整備が鍵だったという理解は、まあ正しいと思う。「全ての道はローマに続く」と言われるように、有事の際に軍隊そのものや必要な物資を素早く移動できる舗装された交通インフラは、平時には交易の要にもなったりして、広大な国土の動…

でっぱり物件

オランダの建築家集団MVRDVによる設計で、55歳以上の年齢制限がある高齢者用集合住宅「オクラホマ」。1997年に建てられた。 いくらなんでもそりゃ出っ張らせすぎだよと思いつつ、実際に見てみると、あまりにも豪快に出っ張っていて本当にびっくりする。なん…

パッチワーク建築

倉庫として使用されていると思われるこの物件は、キュートすぎる。テクスチャー、カラー、プロポーション、ディテール、ダンメン、どこを見ても完璧だよねえ。本当に愛くるしい。射水市を訪問するたびに、魅力的な物件に大量に出くわす。どんだけポテンシャ…

薄さと細さの意味

スイスの構造設計家のクリスチャン・メンがデザインしたズンニベルク橋。橋梁ファンはマイヤールのサルギナトーベル橋の巡礼とセットで訪れる橋だ。床版から上のケーブルの位置がとても低いのでエクストラドーズド形式にも思えるけど、どうなんだろうか。ぺ…

地域の奥深さに触れる体験

年度末のドタバタの中、ここ数年ですっかりお世話になっている富山へ、開業したばかりの北陸新幹線に乗って行ってきた。短い滞在だったのに、いろんな人にお会いすることができて、いろんなお話を伺うことができた。中でも強烈な体験だったのが、神通川の河…

エネルギー転換ツアー

すっかり時間が経ってしまったが、先週頭に福島県いわき市を中心とする一泊二日のモニターツアーを強行した。と言っても、あるモニターツアーに参加させていただくことに便乗して、こちらも裏テーマを勝手に設定してオリジナルのモニターツアーをかぶせてみ…

エネルギーの廃墟

先日の福島訪問では、「いわき市石炭・化石館」や「みろく沢炭鉱資料館」を含めた常磐炭田関連の施設を、いわきヘリテージツーリズム協議会の方々から丁寧なご解説をいただきながら、駆け足で巡った。 その中でも最もビジュアル的な迫力があったのは、「常磐…

黒い袋

昨日、福島第一原子力発電所の帰還困難区域のすぐ近くまで訪問する機会を得た。そこで見た光景は、なんともやるせないものだった。とてもじゃないが、すぐに受け止められる風景ではない。 そこには、様々な立場の人の、おそらく全てが負の方向であろう様々な…

端正な裏の顔

スイスのシオンという街にある、ローヌ川を跨ぐ高速道路の橋「シャンドリーヌ橋」。三次元的に三面が変化する主塔の形状がユニークなPC斜張橋なんだけど、この桁裏がすごくイケメン。コンクリートのトラスが心地よいリズム感を生み出しているし、桁高をグ…

セットもの

スイスのマルティニという街のやや北に、ローヌ川を跨ぐ「サン・モーリス橋」という高速道路の橋がある。3年半前、スイスのダム巡りのために画面奥側から走行してきた際に、これは!と思ってすぐさま高速道路を降りて見に行った。 これがなかなか面白く、ト…

ふんわり地下空間

昨日、山手トンネルが全線開通した。うっかりしていて、開通おめでとう!を言いそびれてしまったので、あらためてここで紹介しよう。 すでに記載したように(新品トンネル)、先月の中頃、このトンネルを見学させていただく機会を得た。そのときの様子は、住…

行きにくい水門

ロッテルダムの南西にあるスパイケニッセという街の近くに、なんとスパンが98mもある「ハーテル防潮水門」がある。例の「デルタワークス」関連施設(暮らしを守るということ)だ。ローラーゲートとしてはたぶん世界最大なんじゃないかね。ちゃんと調べてない…

景観公園

4年前に撮った写真をあらためて見返しても、ルール地方のデュイスブルクにある「ランドシャフトパーク」はすごい。日本語で言うと、「景観公園」だ。ここは1985年に操業を停止したテュッセン製鉄所の遺構を利用している公園で、斜め上を行く様々な施設が盛…

岸壁の退役クレーン

もう4年も前のことになるが、アントワープのスヘルデ川沿いの岸壁に、個性豊かな古いクレーンたちが何台も置かれていた。この写真以外にも、まだまだたくさんあった。おそらく退役したクレーンたちが招集されたのだと思うが、なんの案内もなかったので、そ…

輪になって踊ろう

フランスの南部を巡ったときにはアヴィニヨンにも立ち寄ったのだが、もっとゆったり味わうべき街だった。ここの歴史地区は世界遺産にも登録されているってのに、ほとんど駆け足でバタバタしちゃっただなんて、実にもったいないよね。でもさすがに「アヴィニ…

歴史のお勉強

昨年のお正月に敢行したオランダ旅行では、ロッテルダムのファン・ネレ工場にも行った。もっとも見学の予約をしていなかったので、ゲートから中には入れなかったんだけど。 ここは昨年の6月に世界遺産登録されたばかりの工場で、もともとは煙草、紅茶、コー…

新品トンネル

先日、供用間近の山手トンネル(湾岸線〜渋谷線)を見学させていただいた。このトンネルの開通によって、首都高中央環状線(C2)がついに完結するのだ。すでに供用済みの板橋までの区間を含めると、総延長はなんと18.2kmにおよぶ。長いとされる山岳トンネ…