かつて秋田市の発展を支えた水源地の藤倉ダムは、1911(明治44)年から使われはじめて、1973(昭和48)年に引退した重力式コンクリートダムだ。堤体の直上に架かるトラス橋や右岸側の岩をぐるりと迂回する放水路などの周辺施設も現役当時の姿のままに残されており、周辺の風景と一体になった緻密な仕事っぷりに思わず感嘆する。
大型連休中の午前に1時間以上もこの場にいたにもかかわらず、誰にも会うことがなかった。完全に貸し切り状態だった。人がいればいいってことではないが、あまりにももったいないよねえ。人を誘い込む仕掛けがもっとあってもいいだろうに。ドボク近辺の資産は、もっともっと有効に活用できるはずだ。
大分県竹田市の白水堰堤の優美な曲面も素晴らしいが、藤倉ダムの隙のない凛とした姿も素晴らしい。緻密な設計と丁寧な施工によって極めて高いクオリティを実現している古い構造物ってのは、関係者の怨念にも似た極めて高濃度のエネルギーが込められているようで、ものすごく圧倒される。折に触れてこういう素晴らしい構造物を鑑賞することで、自分の感覚を正常な状態にチューニングしておきたいね。なにが正常かってのはさておき。