はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

本当に純粋な階段

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現在千葉市美術館で行われている『赤瀬川原平の芸術原論展』(会期:2014年10月28日~ 12月23日、オフィシャルサイト:こちら)は、必ず行くべき展覧会だよ。開催の「前日」に訃報に接したときは、そのニュースすら作品の一部なのでは?と思ってしまったが、展覧会を見てその思いがいっそう強くなったな。

個人的には「超芸術トマソン」から「路上観察学会」の流れに強い影響を受けたのだけど、僕がこれまであまり知らなかったとてつもなく幅広い領域の仕事群に対しても、ついついニヤリとしてしまった。全てが自分の興味のツボに入ってしまい、おもしろすぎるのだ。話に聞いていただけだった「千円札裁判」も、これはアートの歴史に刻まれた重要な事件だったんだなあとようやく認識できたよ。

赤瀬川原平の作品の中でも一般によく知られるものとして、『トマソン黙示録 真空の踊り場・四谷階段』という写真がある。機能を持たない無用の長物である「純粋階段」であり、1972年に発見された記念すべきトマソン物件第一号である。「鑑賞する側が意味や価値をつくり出す権利を持ってるんだ」という姿勢を宣言しているように感じられる。もちろん上記の展覧会でもしっかり展示され、解説されていたよ。

この機会に、佐倉の城址公園の中にある大日本帝国陸軍によってつくられた『訓練用の12階段』を再訪した。なんと、高所から「飛び降りる」ための階段なのだ。コンクリートでつくっちゃったから壊すのが面倒という、いかにも戦争遺構らしい物件だ。勾配は極めてきついのだけど、断面を斜めにしていて踏面を広く取っているので、見た目よりも登りやすい。端部の処理がユニークで、グラフィカルな面白さを生み出してる。いろいろピュアだよね。

この階段をしっかり鑑賞することが、赤瀬川原平の追悼になるんじゃないかと思ったことは、ほとんどの人は理解できないだろうし、僕自身もよくわからない感情である。ともあれ、この現場でニヤリとできるようになったことを素直に感謝した。合掌。