愛媛県宇和島市の「遊子水荷浦(ゆすみずがうら)の段畑」を訪問した。急峻な地形の輪郭が、ジャガイモの葉の緑と石垣との鮮やかなコントラストが生み出すコンターによって可視化されている。これほどインパクトのある景観は、そうそう見られるものではない。
複雑に入り組んだ急峻なリアス式海岸のこのエリアは、もともと平地が極端に少なく、耕作の適地などはほとんどないのだ。そこで尾根の最上部まで人の手で石を積み上げて、狭小な平場を連続的に生み出している段畑が生み出された。単位面積あたりの収穫量や労働力あたりの収穫量は、平地と比べると極端に低いのだろうが、人間の生活にとっては、いかに平場が必要不可欠であるかを思い知らされた。
これまで様々な人工斜面を見てきたが、ここでは最大級の感動が得られたな。だって、とてつもない労力と時間をかけて形成された風景なんだもの。ここで出会った地元の方々の朗らかさや柔らかさや逞しさが、その印象をより深いものにしてくれたよ。
以下、おばあちゃんたちへのヒアリングメモ。
ずっと昔からこの畑はある/見慣れた当たり前の風景だから、そんなにすごいとは思わない/昔はイモや麦を植えていたが、いまは馬鈴薯が主/日照と潮風の影響からか、味や食感の評判がよく、ブランド化している/二期作であり、来月あたり収穫する/畑の仕事はとてもたいへん/みんな養殖をやっていて、一時期は畑がだいぶ荒れた/いまは保存や復元の動きがある/市の人もがんばっている/もともとの海岸線は斜面の直下で、ほとんど平場はなかった/山頂のお墓からの眺めはすごくいい/おやおやずいぶん遠いところから来たんだね
以下、比較対象になり得る人工斜面シリーズのメモ。
サイボーグ化した岩盤、本気の石積み風、ローマ劇場、セメントツアー、巨大なコンクリートの網、地層展示、大地の断面、房総の荒々しさ、十字架アンカー、フーチング、信じがたい調和、世界一の壁、スイスダム巡礼、壮麗な彫刻、オープンピットマイニング、ワッフルと緑、露天掘鉱山的