はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

鉄道連絡船

乗り物の中に乗り物がすっぽり入るという状況は、たいへん魅力的に感じる。自動車を船倉に入れて運ぶ「カーフェリー」はこれまで何度も体験したことがあるけれど、鉄道車両をそのまま船倉に入れる「鉄道車両渡船」は体験したことがない。ずいぶんスケールの大きい話なので、ちょっと理解しにくいよね。すでに廃止された航路だけど、鉄道連絡船のイメージを膨らませるのに適した場所に行ってきた。

僕が通っている床屋のご主人が、青森に行くなら「青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸」が楽しいよと勧めてくれたので立ち寄ってみたところ、想像していた以上に重厚な体験が得られた。前日に「青函トンネル記念館」に行ったことも大いにあるのだろう、北海道と本州の接続について、立体感を伴って理解することができたのだ。

廃止された青函連絡船をそのままミュージアムにしているこの施設。順路に従って歩いて行くと、まずはところ狭しと並べられたかつての青森を表現する原寸大ジオラマに威圧される。その後に、青函連絡船がなんたるかという一方的な動画展示、パネル展示、資料展示などがあり、このまま続くのはなかなか厳しいかもと思わせられる。しかし、操舵室などを抜けて甲板に出て煙突を改装した展望台に至ると、すっかり船らしい体験に変わる。なぜか青森ベイブリッジの技術展示の後に、鉄道車両が置かれた車両甲板に至り、鉄道連絡船だったことを体感させてくれる。その後は機関室などのマニアックな要素も堪能し、再び車両甲板を通過して順路は終了する。

さまざまな要素をごった煮にした古めかしいストロングスタイルの展示ではあるけれど、それらをまとめ上げる連絡船のリアリティの強度はすごいと感じたな。説得力が尋常ではない。青森を訪問する機会があれば、ぜひ立ち寄ってみてはいかがだろうか。青森駅直結みたいなもんだし。