はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

誰も見ないデザイン

湯西川ダムによる湯西川湖の最上流部に、「仲内大橋」というPCラーメン橋がひっそりと架かっている。小判型橋脚とウェブが少し斜めになった桁の剛結部のおさまり、桁の下端が描く伸びやかなライン、橋脚の型枠の割り付け、シンプルな橋面工など、なかなか素敵なおさまりになっているんじゃないかと思う。水面の反射を受けて揺らめくコンクリートの表面も、とてもきれいなまま。排水管は致し方ないとしても。

完成して15年以上経つであろうこの橋は、点検時以外でこれほど真剣に眺められたことはないのではないだろうか。なにしろ、この橋のデザインを担当した僕ですら、この夏にようやく見に行った体たらくなので。たぶん四半世紀ほど前であろう設計当時は、「付替県道3号橋」という名称だったはず。構造設計担当の先輩とは、意見の違いで何度か衝突したような記憶がうっすらある。

見られる対象になりにくい構造物は、どうせ誰も見ないのだからと、そのデザインがないがしろにされる場合がある。でも、モノをつくる以上は、その姿かたちを整えることは当然の責務だと思いたい。たとえ誰にも気付かれなくても、つくり手がプライドを持っている世界に暮らしたい。大幅にコストアップするわけじゃないんだからさ。

ともあれ、設計してくださった先輩、管理監督してくださったみなさま、丁寧に施工してくださったみなさま、きれいな姿を実現してくださり、どうもありがとうございます。僕はこっそりと、じっくりと、満足感を抱きながら拝見しましたよ。