はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

悪魔の橋

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昔から人は自分が理解できないものを、神や悪魔の仕業として位置付けようとする。どうにもならない難所に超絶テクニックを用いて架けられたことで、「悪魔の橋」と呼ばれる橋梁は世界中にあるだろう。有名どころでは、スイスのゴッタルド峠の近くに架かる橋。ウィキペディアにもその絵が掲載されている。

スイス山岳リゾートの拠点のひとつであるフリムスのトレッキングコースに架けられたWasserfallbrücke(Waterfall Bridge)の研ぎ澄まされた姿は、まさしく「悪魔の橋」だった。高欄の下部のステンレス板にストレスを導入することでアーチ状に並べた石材を圧縮しているのだけど、そんなことはさておき、目の前にあるのにCGにしか見えないほど現実感が無かった。

設計者のユルグ・コンツェット氏へのインタビューでは、著書にも記載されているとおり、ゴッタルド峠の橋を強く意識していることを語ってくださった。最初のスケッチはまさに悪魔の橋のようなフォルムのアーチ橋だったが、検討を重ねるうちにスパンをやむなく18mに延長し、構造もアクロバティックなものに変化したようだ。制約こそがスーパーデザインを生み出す要因になるという事実を突きつけられた。