はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

2014-01-01から1年間の記事一覧

遠慮がちな道路

近頃、鳥取を島根を結ぶ江島大橋(参照:橋ガール #07 江島大橋)が、軽自動車のTVCMをきっかけに「べた踏み坂」として有名になった。個人的に鳥取と島根は数少ない未踏県でもあるため、ぜひとも見に行きたいと思っている。 沿岸部には時々、こうしたすごい…

地底駅

先日糸魚川方面に車で行った際に、JR北陸本線の筒石駅に立ち寄ってみた。大都市における地下鉄駅とは異なり、山岳トンネルの途中にホームがあるというレア物件。しかも、かなり深い地中にあるとのこと。わかるようでいて、よくわからないよね。 国道8号線を…

看板建築の集大成

アムステルダムの北側にあるザーンダム駅前は、いろいろアレすぎて、どうすればいいのかわからなくなる。近くにあるザーンセスカンスという歴史的地区の装飾を踏襲しているようなのだが、どうしても正視できずに、どんどん心がささくれ立っていくのを感じた…

床版レス歩道橋

橋梁における「床版(しょうばん)」とは、文字通り大地の代替物としての「床」のことであり、彼方と此方を結びつける橋梁の本質の要素とも言える。ちなみに床版を支えるものが「桁」であり、桁を支えるものが「橋脚」や「橋台」と理解しておけばいいだろう…

砂防ランド

長野北部方面を訪問する際、休憩がてらチラッと寄り道ができるところを探していたら、新潟県の妙高市に「万内川砂防公園」という情報を見つけたので、なにはともあれ行ってみた。これが予想をはるかに超える素晴らしい場所だった。大正から現在までに整備さ…

アートエリア内の砂防堰堤

昨日までの4日間、長野と新潟の砂防やダムなどを「取材のため」と称しながらじっくり巡った。「遊びじゃないんだよ、仕事なんだよ」と、ほとんど意味のないうわごとを、ウキウキ気分が激しく先行する自分に言い聞かせながら。 今回の旅は再訪する対象が多く…

何があっても落とさない

富山の高岡市と射水市を結ぶ万葉線に乗っていたとき、庄川の河口に変断面が連続するコンクリート橋が見えたので、後日あらためて訪問してみた。1938(昭和13)年につくられた国道415号の「新庄川橋」である。 RC桁が描くリズミカルなラインはとても丁寧にデ…

人工の土地

先日四国を訪問する際に、Twitterで「僕が行くべきところを教えて!」と羽田空港でつぶやいたところ、僕の好みを理解してくださっている方々からいろいろとご教示いただけた。その中に「坂出人工土地」という不思議な響きのワードがあったので簡単に調べてみ…

アーチ風トラス

オランダにあるロシアの旅客機(飛行機に泊まる)に宿泊した翌日、高速道路を北上してズウォレという街に向かった。街に近づいてきたので駐車場の心配をしていたら、川を渡る際に右手の遠方に赤い橋がチラリと見えた。むむっ?あれはもしや、事前のチェック…

反復階段

木更津駅西口に面した商業施設の裏側に、極めてゴージャスな避難階段があった。この建物から海側は背の高い建物がそれほど多くないため遠くからでもよく視認でき、木更津のシンボルと言ってもいいくらいの存在感を放っていた。 この商業ビルはもともと「木更…

広場の変遷

昨晩、おそらく10数年ぶりに映画「ニュー・シネマ・パラダイス」(完全オリジナル版)を鑑賞した。シチリアの小さな村を舞台に、やがて映画監督として大成するけれど人としての出来はいまひとつなトトの成長が丁寧に描かれている映画である。エンニオ・モリ…

放置自動車

アムステルダムのNDSMという再開発エリアの駐車場に、奇妙な物体があった。キューブ状にプレスされた鉄くずが、木製のパレットに載せられて、駐車升の中央に鎮座しているのだ。 もしかして、車のスクラップなんだろうかね。だとすると、所有者はちゃんと駐車…

イタリアが好きになる理由

ヴェローナのカステルヴェッキオ美術館(古城の軽い橋)、ヴェネツィアのクエリーニ・スタンパリア美術館(スカルパの橋)などをじっくり見た結果、カルロ・スカルパの信念に基づく動線計画の緻密さやディテールの工芸的完成度の高さなどにすっかり魅了され…

水門コンポジション

たまたま見かけた防潮水門の裏側のリブが、モンドリアンの「コンポジション」に見えてならない。(類例:下町のモンドリアン) 愛媛県大洲市の肱川河口にある長浜大橋を見に行ったのだが、その橋詰付近でこの真新しい防潮水門を見つけてしまい、目にやり場に…

作品としての樋門

先日四国に行った際、当然のごとく「豊稔池堰堤」を詣でた。おそらく15年ぶりくらいになると思う(城砦ダム)。相変わらず、地元の農民たちが積み上げたという黒々とした石材と、モルタルから染み出した白華のコントラストが生み出すテクスチャーがたまらな…

贅沢コンボセット

愛媛の別子銅山に行こうと地図を眺めていたら、くるりと円を描くすてきな道がたまたま目に入った。鹿森ダムの上下流の高低差を解消するためのループ橋だ。これは見に行かなければと、迷うことなく立ち寄った。 同様のロケーションは、小樽の朝里ダムや秩父の…

フィリップスのUFO

オランダのアイントホーフェンという街は、大手家電メーカーであるフィリップスの企業城下町である。街のあちこちにフィリップスが絡む建造物があるのだけど、アイントホーフェンのシンボル的存在の「Evoluon」はその代表格。未確認飛行物体のイメージを持つ…

平地コンプレックス

愛媛県宇和島市の「遊子水荷浦(ゆすみずがうら)の段畑」を訪問した。急峻な地形の輪郭が、ジャガイモの葉の緑と石垣との鮮やかなコントラストが生み出すコンターによって可視化されている。これほどインパクトのある景観は、そうそう見られるものではない。…

サイボーグ化した岩盤

アーチダムってのは膨大な水圧をアーチ構造で受けて岩盤に伝えるため、両岸が頑強な谷にしかつくれない。このため、アーチダム鑑賞の際は、ドーム曲面の美しさを愛でるとともに、堤体が突き刺さっている大地のがんばりがひとつの見どころである。 なかでも長…

教会書店

以前、マーストリヒトにある教会をリノベーションした書店(時の刻み方)を見に行った。アムステルダムから東に100kmほどのズウォレの街にも、昨年の夏に教会リノベ書店がオープンしたという情報を入手したので、お正月に立ち寄ってきた。 15世紀に建てられ…

紅白橋梁

北陸自動車道を走行していると、運がよければ目の前を飛行機が横切ることがあるそうだ。実際に本線上には「飛行機通過 わき見注意」という注意喚起の標識も掲げられている。 なぜかというと、高速道路から500mほど南に「富山きときと空港」の滑走路が直交し…

ローマで最初の大空間体験

友人がローマに行くというので、見どころを尋ねられた。僕に尋ねると言うことは、普通の観光地の斜め上を望んでいるのだろうと解釈して、エウル地区(超現実シティ)やローマオリンピックの会場となった地区(オリンピックドーム、ザハ、音楽の橋)などを紹…

消えゆく名橋

解体工事が進む旧・富山大橋を、隣接して架けられた新・富山大橋から拝んできた。一年前に訪れた時から比べても、かなり工事が進んでいることがわかるね。左岸側は上部工は完全に撤去され、下部工は一基のみとなり、右岸側に一部残されている桁も床版はすっ…

自然に還る過程

プレキャストコンクリートブロックを積み重ねた砂防堰堤。災害対応の緊急工事としてつくられたもの。既存の重力式コンクリートの砂防堰堤の直上、つまり、支持力が期待できない堆積した土砂の上に特急で構築されることになったため、沈下による変形が許容で…

斜めに持ち上がる板

オランダのレーワルデンという街に、斜め45度に桁が持ち上がるという、なかなか理解しにくい可動橋「Slauerhoffbrug」を見に行ってきた。実物を目の当たりにしても、たたずまいや造形が放っているばかばかしさは十分に伝わってくるものの、その動作を想像す…

雪のダム

富山の小牧ダムを再訪した。ここ1年の間に3度も訪れている。いつも違う表情を魅せてくれるが、今回も全く寒さを感じないほどにすてきだった。うっすらと表面を覆う着雪と黒っぽいコンクリート堤体とのコントラスト、静謐な冬景色と豪快な放流のコントラスト…

旋回レストラン

1960年代の後半あたりだろうか、ビル屋上に円盤が乗せられて、それが回転するという大胆なレストランが流行った時期があったように思う。 アムステルダムにある「Café Restaurant OPEN」は、それらとは全く異なる。廃止された鉄道の旋回橋を、レストランとし…

木でできた山

以前から木材チップの原料ヤードを見てみたいなあ(木の上に群生する金属の林)と思っていたのだが、先日ついに実現した。伏木富山港にある「中越パルプ工業」のストックヤードの見学をさせていただいたのだ。これ(水鏡の風景)もその時の様子。 ものすごく…

竪坑の内臓

マーストリヒトにほど近いベルギーのヘンクという街に、「C-mine」という炭鉱跡をリノベーションした施設がある。ここの情報はネットでちらほら見かけていたのだけど、具体的にどんな施設なんだかよくわかっていなかった。タービン建屋のチケット売り場でい…

長すぎるオフィスビルとベンチ

アムステルダムの造船所跡地に、かつてはクレーンが載せられていた全長270mのコンクリートのフレームが残されていた。これまでもオランダ人のすさまじいリノベーションマインドを数多く見てきたが(たとえば、飛行機に泊まる、クレーンに泊まる、毒虫の部屋…