先週はローラン・ネイの話を直接伺う機会がいくつもあった。その中で彼は、随所に「インテグレーション」という言葉をちりばめていた。前回に引き続いて、再びアムステルダムのフルハトハーフェン橋(Vluchthavenbrug、2012)を眺めることで、彼の「インテグレーション」を復習してみる。
一体化された桁と床版は、30mmの鉄板を曲げて逆U断面をつくり、リブを配置して補強している。支点部は高く、支間中央部は低くなっているばかりか、路面にも高低差をつくり出している。おそらくコンピュータによって構造と制作が最適化されて生み出された形態なんだろうね。その結果、穏やかでリズミカルな波のような造形が生まれている。
トップレールがない高欄も、なかなか凝っている。自転車大国らしくチェーンを設置できないように縦の部材のみにしているのだが、上部をわずかに曲げていることと、下部にLED照明を仕込むことで、桁の高低差をうまく強調している。高欄は床版の上面に定着させているのではなく、床版に穴を空けて、桁の側面に裏側から定着させている。少しややこしい仕掛けに感じるが、橋面の排水路として機能させている。極めて数が多い定着部の保守と、桁側面にすでに発生している汚れが気になるところではあるが。
これだけ複雑なことをやっているのだから、現場はややこしいんだろうなあなんて思っていたのだが、いくつかに分割された桁を高欄も含めてすべて工場で製作し、それらを台船で運搬し、クレーンで一気に載せて接合したのだという。現場や工程の縦割りもばっさり合理化しているんだね。推測だけど、一部の高欄は後付けにして、そこに吊りピースを仕込んでいるんじゃないかな。どこにも吊るための部材が見当たらなかったので。
一部は船着き場に入るために可動部が設けられているのだが、閉じているときは全く違和感なく連続的におさまっていてすごい。ちなみにこの歩道橋は裁判所、ホテル、オフィスなどがあるおしゃれ系ダッチデザインがあふれ出た再開発エリアと市街地を結びつけている。
ネイが手がけてきた構造物は、構造、造形、施工、利用、地域性、コストなどの全く別々の価値観が、シームレスに接続されている。しかも、それを既視感が少ないユニークなフォルムで実現していることで、そこから先の未来すら予感させてくれる。様々な要件を整理統合して高い次元の最適解を得ることは、僕としてもデザイン行為の重要な定義のひとつと考えているので、彼の橋を説明材料に加えていこうと思う。