はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

砂防

千本鳥居ダム

長野県の小谷村で開催された『「新」小谷村砂防ダムツアー』に参加した。朝8時から夕方4時まで、村内に点在する12の砂防施設をみっちりと巡るという、極めてマニアックなツアーだ。僕は9年前に一度、旧ツアーに参加している。その時に「私的ドボク大賞2013」…

ゆらぎ

常願寺川の中流域にあった、災害時に出動するのであろうコンクリートブロックたち。砂防の聖地である立山カルデラが源流のひとつであるだけに、もしもの時の備えも気が抜けない。だからと言って、ビシッと完璧な隊列を組んでいるのかと思いきや、ちょっとし…

自然現象と人間活動の交錯点

東日本大震災の発災翌日である2011年3月12日の朝、長野県北部地震によって写真右上の斜面が崩壊し、大量の土砂が積雪を巻き込みながら、写真左側にある国道353号を飲み込んだ。その緊急対策としてつくられたのが、鋼製セル工法による主堤体を有するこのトヤ…

信仰心の芽生え

立山カルデラへの潜入体験って、本当に貴重である。スケジュールを確保して現地に乗り込んでも、雨が降るとそれだけで立ち入り禁止になるわけで。幸運なことに僕は過去に二度ほどカルデラ潜入に成功したのだが、つい先日は雨でNGになってしまった。 どん底の…

カオスな斜面

鹿児島県にある鶴田ダムによる大鶴湖畔の道路を通っていたら、突然、まるで現実感が無い空間にポンと放り出された気分になった。現地で目の前の風景がVRゴーグルで見たCGなんじゃないかと思ったけど、あらためて写真を見てもやっぱりCGだったんじゃないかと…

リアルな山水画

先週末は旭川を訪問した。11月上旬なのに、ひょっとすると根雪になるんじゃないかと思うほどの荒天に見舞われた。訪問者の身勝手な思いだけど、久々に真冬の北海道を疑似体験できて、懐かしさとうれしさがこみ上げてきた。 土曜日の午前中に用務が終わり、夕…

滝になった川

先週末、常願寺川の上流から河口までを2日間かけて丁寧にたどる旅を実践してきた。ここ数年で何度も訪れているエリアだけど、はじめての体験がいくつか実現できた。まず、常願寺川の源流の一つである称名川が弥陀ヶ原台地を一気に350mも流れ落ちる「称名滝」…

海岸の多層防御

昨日は21_21デザインサイトで行われている「土木展」のイベントとして、大山顕さんと「土木を愛する人たち」というタイトルのトークセッションを行った。大山さんのご提案により、展示のテーマにも掲げている「つなぐ、ながす、ほる、ためる」に含まれていな…

中央構造線上砂防

ふとしたことをきっかけに、何年か前にどこかの山の中を走行していたら、不意に目の前に荒涼とした風景が広がり驚いたことを思い出した。その時すぐに車を止めて砂防堰堤の写真を撮った気がしたので、つたない記憶をよろよろ辿り、ようやく見つけた。 少し調…

人工物上の天然湖沼

先日、某所でお話ししたとき、インフラ景観の魅力について「人知を越える自然に必死に抵抗するための叡智の集積」といった表現を用いたところ、来場者の方に猛然と抗議された。その時は彼のお怒りポイントがさっぱりわからなかったが、おそらく、土木事業に…

谷を守るトンネル

9月に再訪した立山カルデラでは、昨年行くことができなかった白岩砂防堰堤右岸側の岩盤を補強する対策工を見学させていただいた。これがまたすごかった。行き止まりのトンネルと、その壁面にボツボツ突き出したアンカーヘッドが生み出す、あまりにも迫力のあ…

つぎはぎの精鋭

またしても砂防の聖地である「立山カルデラ」を訪問する機会を得た。幻の村「水谷平」に向かうトロッコから見える常願寺川では、各種の砂防工事が延々と行われている。その中でも目を引いたのが、以前に被災した堤体を再利用して継ぎ足した、なんとも一体感…

ドボク遊具

新潟県妙高市にある「万内川砂防公園」に、強烈な魅力を放つ遊具があった。砂防堰堤の水通しを模したと思われるジャングルジム複合すべり台だ。ここでドボク情操教育を受けて育ったこどもたちは、きっと日本の国土全体を俯瞰的に捉えられるようになるだろう…

コンバイン砂防堰堤

立山カルデラの出口を守る白岩堰堤は、右岸側が越流部を持つ重力式コンクリートダム、中央部が非越流部を持つ重力式コンクリートダム、左岸側がアースダムで構成された、いわゆる複合構造の「コンバインダム」である。地形地質の特徴に合わせつつも経済的合…

砂防の聖地

先月の中頃に訪問した立山カルデラのハイライトのひとつは、文句なしにカルデラ出口の狭隘な谷の要である「白岩堰堤」だ。本気で世界遺産にすべき人類の叡智の結晶だよ。すでに重要文化財には指定されているけどね。もちろん、観光地化するわけにはいかない…

緑の崩壊面

立山カルデラの見学の際に車で移動していたとき、真川の向こう岸に妙な斜面が見えたので、車を止めていただいた。表面はとげとげしいのに、均一な緑に覆われているという、極めて不自然な眺めだ。まさかしばらく前に話題になった、岩山を緑色のペンキで塗装…

自然に取り込まれる

立山カルデラの奥の方にある最新の砂防堰堤の少し手前に、1938(昭和13)年につくられたという老堰堤があった。「泥谷」という沢を跨ぐ橋梁から、堤体の下流面を見ることができた。越流部に見えるコンクリートのテクスチャーからして、尋常ではない風格が漂…

山奥にある幻の村

明治の頃から脈々と続けられている立山カルデラの砂防事業は、あまりにも雪が多い日本アルプスの山頂付近が現場であるため、6月から11月までの半年間しか工事を行うことができない。現地を案内してくださった方は「100年の現場だけど、50年分しかやっていな…

崩れた土砂の崩れ

たいへんありがたいことに、滅多なことでは立ち入ることができない日本アルプスの巨大スリバチ「立山カルデラ」に潜入させていただいた。このエリアは関係者以外立入禁止のうえ、11月から5月は雪に閉ざされてしまう超ハードな防災最前線の現場なのだ。一般人…

砂防ランド

長野北部方面を訪問する際、休憩がてらチラッと寄り道ができるところを探していたら、新潟県の妙高市に「万内川砂防公園」という情報を見つけたので、なにはともあれ行ってみた。これが予想をはるかに超える素晴らしい場所だった。大正から現在までに整備さ…

アートエリア内の砂防堰堤

昨日までの4日間、長野と新潟の砂防やダムなどを「取材のため」と称しながらじっくり巡った。「遊びじゃないんだよ、仕事なんだよ」と、ほとんど意味のないうわごとを、ウキウキ気分が激しく先行する自分に言い聞かせながら。 今回の旅は再訪する対象が多く…

自然に還る過程

プレキャストコンクリートブロックを積み重ねた砂防堰堤。災害対応の緊急工事としてつくられたもの。既存の重力式コンクリートの砂防堰堤の直上、つまり、支持力が期待できない堆積した土砂の上に特急で構築されることになったため、沈下による変形が許容で…

砂防の十種盛り合わせ

先月の前半、長野県小谷(おたり)村で開催された「ドボクアート砂防ダム巡りバスツアー」に参加した。これがとんでもなくキレキレのツアーでびびった。ここでしか体験できないというご当地プレミア感が満載で、すっかり興奮しまくり。そのツアーの模様は、…

巨大なコンクリートの網

先週の土曜日、長野県小谷(おたり)村で開催された「ドボクアート砂防ダム巡りバスツアー」に参加してきた。これがとてつもなくキレキレのツアーで、すっかり興奮しまくってしまった。詳細は、気分次第でまた後日。 ツアー終了後、他の参加者のみなさまと別…

砂防鑑賞

美瑛町の「青い池」に行ってきた。アップル社のMacOSのデスクトップにも採用された日本人写真家の手による超美麗写真のアレだ。日曜日の午前中に訪問し、すごい賑わっているなあと実感したのだけど、午後に十勝岳方向から戻って現地を通過してみると、1km以…

砂防階段

松本市の南東部を流れる牛伏川の上流は、江戸時代からの森林伐採ですっかり荒廃していたらしい。しかも、糸魚川静岡構造線に沿った脆弱な地質であるために、土砂災害が絶えなかったらしい。たしかに現地に掲示されている昔の写真を見ると、見渡す限りはげ山…