はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

地形

浸食の供養

今年の大型連休における人出の傾向は「安近短」と言われているが、僕もその通りの行動を取り、土日に車で銚子を訪問した。あいにく日曜日に雨に降られたので、土曜日のうちに見たいものを詰め込んだ行程にした。 銚子旅行の主目的は、屏風ヶ浦の鑑賞。下総台…

地獄と極楽

彼方と此方の境界についてぼんやり考えていたら、数年前の下北出張の際に訪れた霊場恐山のことを思い出した。かなりインパクトのある景観体験だったのに、ブログには残していなかったんだなあ。 恐山固有の景観は、火山活動によってつくり出されてきた。あた…

埋立地の新しい街

僕が学生だった1990年頃、幕張新都心はまっさらな埋立地に突然たくさんの高層建築が生えた、不思議な街だった。その頃はまだ居住区が整備されておらず、そこかしこに空地が目立つ状況だったように思う。自分の卒論では、キロの単位で視距が確保できたこのエ…

水平の必然性

道路は地形の傾斜を反映している。アーケードは道路勾配に従っている。歩道に置かれた看板やプランターも地形に従っている。しかし、提灯は重力に従って垂れている。もちろん、道路に貼り付く建物は、重力に起因する人間の都合に従い、水平と鉛直で構成され…

内湾の防潮堤

三陸海岸の沿岸漁業から世界の海に出る遠洋漁業を網羅するレンジの広い漁業基地として、さらには水産加工業や造船業でも栄えてきた気仙沼。その発展の起点は、気仙沼湾のさらに奥にある入り江を取り巻く内湾地区と言われている。この場所が海と人を結びつけ…

斜行事例

ある方とのやりとりの中で「社交辞令」が話題となった。しかし、あっという間に「斜行事例」の話題にすり替わり、大いに盛り上がった。いや、一方的に僕だけな気もするが。鉛直でも水平でもなく斜めに移動するってことは、特別な事情を乗り越えるための解決…

橋梁景観とは別の話

波形鋼板ウェブを用いたエクストラドーズド橋である近江大鳥橋を再訪した。まあ前回の2004年時点は建設中だったので、完成後の姿ははじめてだ。まるでエヴァンゲリオンに出てくる使徒のようなエグみのある造形は衰えていないどころか、凄みを増していた。 そ…

熱海らしさ

全く知らない町でも、意図的に自分の感度を上げて1時間くらいフラフラ歩き回っていると、なんとなくその町の特性が体に染みこんでくる気がする。次第に発見が増えていくというか解像感が増すというか、ともかくその街の風景の見え方がクリアになっていく感覚…

基準とするもの

小諸で見た、傾斜のある台形の敷地に建つビルの裏側。強い違和感があったのでじっと見ていたら、どんどんクラクラが増幅してきた。一体の建物ではなく、縦方向に細かく分割されているのだろうか、どうもフロアの位置が微妙に異なっているようだ。正面の道路…

隙間を埋めたい衝動

誰でも隙間があれば埋めたくなる気分を味わったことがあるだろう。なにかに依存しようとするしょうもない心理状態だ。僕は今、猛烈にそんな状態。なんのことかというと、リリースしたばかりの「はちまドボク地図」の隙間を埋めたい衝動に駆られている。どう…

勾配の可視化

地形の起伏を意識する際には、比較対象となる水平面が存在しているとたいへんわかりやすい。連続した傾斜を持つ実際に近いジオラマ模型よりも、スチレンボードを積層したコンター模型のほうが、地形を読み込む検討には適している。 棚田や段畑のようなスケー…

リフト付き歩道橋

高低差がある街ではときどき、歩道橋付きのリフト、もしくは、リフト付きの歩道橋を見ることがある。ヨーロッパの街ではえらくかっこよく仕立てられてものもしばしば体験できる(例えば、バーデン:緑の中の昇降、ロールシャッハ:駅前エレベーター橋、エッ…

ワイナリーのシエスタ

スペイン高級ワインの産地として有名なリオハ地方は、カンタブリア山脈の南側にある。ビルバオなどの大西洋沿岸のエリアは湿度が高かったのに対して、明らかに乾燥しているように感じた。岩山を背景とするなだらかなに傾斜した高原には見渡す限りブドウ畑が…

絶景の道

ビスケー湾に浮かぶガステルガチェという島は、最後のジェダイや伝説のドラゴンの気配が濃厚に漂っていた。どうやら千年以上前から開かれた場所らしい。樹木の生育を拒む荒れ狂う風と波、大地の褶曲が感じられる岩の層、長い石段を経て到達する頂上の礼拝堂…

仙台スリバチ

先週の日曜日、とある学生コンペの審査をするために仙台の東北大学に行ってきた。せっかくの機会なので、個人的に延泊して翌日に市内散策したいと思っていたのだが、その行程は全く考えていなかった。このため、懇親会の席で仲良くなった東北大の学生に「仙…

街のおもしろポイント

ときどき、自分の意思とは無関係にセレクトされた地方都市に出張に行くことがある。そんな時には、まち歩きのトレーニングをする機会だと捉えて、現地のことを事前に調べずに乗り込むようにしている。 少し前には、長野市に行ってきた。用務の隙間に1時間ほ…

地球を感じる秘密の穴

若者たちに連れられて、館山にある秘密の地下施設に行ってきた。それは「館山海軍航空隊赤山地下壕跡」という。東京湾の入口に位置する館山には数多くの戦跡があるというが、こんなにすごいものがあるとは知らなかった。 何がすごいって、表面に現れた地層の…

佐賀の水の礎

佐賀平野は水に恵まれているわけではない。むしろ「照れば渇水、降れば洪水」と呼ばれてきた厳しい状況だ。広大な農地を潤し続ける水源を持つほどの大きな山はないし、干満差が大きい有明海は水害の被害をもたらすこともある。そんな環境の中で、人々は創意…

江戸時代の水システム

唐津湾に注ぎ込む松浦川の中流域に広がる水田地帯に、「桃の川水路」という地味ながらも素晴らしい利水施設がある。佐賀では知らない人がほとんどいないが、佐賀以外ではほとんど知られていない成富兵庫茂安(なりどみひょうごしげやす)の手により、江戸時…

でかすぎる地形模型

地形も楽しいけど、地形模型はもっと楽しい。鳥の視点というか、神の視点が得られる気分になるからだろう。ものごとを俯瞰的に眺めて全体像を捉えることができたときは、地形に限らず、うれしさとともに理解を手に入れた気になるもんねえ。 ところが、全貌を…

高難度空港

ブータン唯一の国際空港であるのパロ空港は、世界でも屈指のパイロット泣かせの空港と言われている。事前にそのうわさ話は聞いていたが、実際に離着陸を体験して、脂汗とともにその理由を深く納得した。なにしろ滑走路の前後にはすぐ山が控えているために、…

魅惑の水戸

先週末は用務があって水戸に出張してきた。僕が住む千葉からは微妙に近くて遠いので、行く機会がありそうでほとんどなかったし、イメージもありそうでほとんどなかった街だ。このため、駅前に降り立ったときには衝撃を受けた。なんでかって言うと、地形の変…

断面に見える斜面

勝浦港の防波堤から見た漁協施設と集落、その背後にある崖地。2つの尾根の間に住宅があることも、チラリと確認できる。まるでポリゴンフレームのような法枠工の急斜面は、山を垂直にザクッとカットした断面のようにも見え、なにかを説明するためのジオラマ模…

リアス海岸の谷

先週は外房の勝浦を、2泊3日でたっぷり堪能してきた。とても印象深かったのは、なんと言っても海側には開いているけれど、陸側は閉ざされているリアス(式)海岸の地形と、それに由来する生活文化。あ、僕を含む大人のほとんどは「リアス式海岸」と教わって…

地を這うモノレール

湘南モノレールは起伏が多い地形との関係がとても面白い。中でも最大の見せ場は、トップスピードで山岳トンネルに突入する場面だと思う。いやほんとびっくりしたよ。都市にあるはずのモノレールが、なんのためらいもなくトンネルに突っ込んでいくんだもの。 …

アルプスの道

オーストリアの狭隘な谷をレンタカーで走ったとき、いやこれムリ!って思った。だって、素掘りトンネルの断面にぴったりサイズのバスが、それほど速度を落とさずにずんずん走ってくるんだよ。恐怖を越える感動を味わうことができたな。 この写真は、Schanerl…

ドボクの集積ポイント

フォルトキルヒの繊細なトラス歩道橋から上流を見ると、なにやら新しそうな屋根付き木橋が見えたので、近寄ってみてみることにした。その木橋自体も様々な工夫が取り入れられていて面白かったのだが、さらに上流に目をやると、なにやら堰堤らしきものが見え…

緑の中の昇降

チューリッヒから電車で15分程度で行けるバーデンという街に、いろいろなミスを重ねてしまって1時間以上かけて到着した。お目当ては、市街地とリマト川の高低差を解消するリフト付き歩道橋。駅前の傾斜地につくられた人工地盤に接続している。 茶色のトラス…

駅前エレベーター橋

ボーデン湖畔のロールシャッハという街に、駅と駅裏の住宅地との高低差を解消するリフト付き歩道橋があるというので行ってみた。これが、ミニマルで雑味がない造形と仕上げの中に知的な色気を織り交ぜるという、いかにもスイスっぽいかっこよさを存分に体現…

中央構造線上砂防

ふとしたことをきっかけに、何年か前にどこかの山の中を走行していたら、不意に目の前に荒涼とした風景が広がり驚いたことを思い出した。その時すぐに車を止めて砂防堰堤の写真を撮った気がしたので、つたない記憶をよろよろ辿り、ようやく見つけた。 少し調…