はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

遺構

キノアト

中古車販売会社の店舗前に限り、街路樹や植栽が枯れたり、伐採されたりしているという。もし事実であれば、とんでもないことである。公共の財産を私的な目的でなきものにするという事態、完全に常軌を逸している。関係各位には厳正な対処をお願いしたい。 そ…

橋上橋

先日開催された「小谷村砂防ダムツアー」の道中にて、衝撃の橋を紹介していただいた。なんと、旧橋であるコンクリート桁橋の直上に、新橋である鈑桁橋が架けられているのだ。ぱっと見たところ、旧橋はコンクリートの高欄もそのままだし、ずいぶん健全な状態…

退廃的緊張感

海外旅行で知らない街を訪れた際に、少々不穏な空気を感じてゾワゾワする場面がよくある。できればそんなシチュエーションに陥りたくないなと思いながらも、あの緊張感をついつい能動的に堪能してしまう人も少なくないだろう。結果的に旅の体験を豊かにして…

マイナーな名橋

富山地方鉄道立山駅の近くに、常願寺川を跨ぐ古い中路式の鋼ブレースドリブ・タイドアーチ橋がある。一目見ただけでも、ただものではない風格が漂っていることがわかる。この橋は、常願寺川水路橋(千寿橋)といい、橋梁エンジニアの増田淳の設計で、1931(…

伝説と廃墟と神秘

僕がティンタジェル城歩道橋をたっぷり体験できたことは、余裕を見込んだスケジュールが功を奏したとか、僕の日頃の行いが良いとか、朝の番組の占いがラッキーだったとか、たまたま晴れ男の効果が発揮されたとか、そんな話ではない。きっとこの奇跡的な体験…

廃墟に刺さる折鶴

ブリストルに宿泊した翌朝、再開発が進められているブリストル・テンプル・ミーズ駅の東側を、エイボン川に沿って少しだけ散策した。昨年完成したばかりというセント・フィリップス歩道橋(St. Philips Footbridge)を見るために。事前にたまたまチェックし…

遺跡をつなぐ橋

イギリス人が大好きなアーサー王の生誕地なんじゃないかと噂されている、コーンウォール地方のティンタジェル。浸食作用で中間部分が崩落したという13世紀のティンタンジェル城の遺跡を再びつなぐように、今年の夏、ローラン・ネイが手がけた新たな橋『ティ…

廃川を見上げる

豪快に鉄道を跨いでいる盛土が河川の堤防だったなんて、ちょっと信じがたいよね。 草津は江戸時代から東海道と中山道が合流する宿場町。その発展を支えた川が草津川なわけだが、どうやら尋常ではない量の土砂も供給されていたようだ。河床が上がると水害が発…

崩壊した壁

今日がベルリンの壁崩壊から30年という記念日であることを先ほど知った。もうそんなに経ったのかという気持ちと、まだ30年しか経っていないのかという気持ちと、どちらもある。振り返ってみると、この日を境に世界が動いたことは間違いなさそうだ。 僕がベル…

後から履いた網タイツ

伊豆の国市にある韮沢反射炉に行ってきた。沼津港にほど近い山中に、江戸幕府によって1857(安政4)年につくられた、鋳物鉄を溶かして大砲などを生産するための極秘軍事施設だ。7月の終わりにたまたま萩反射炉を見てきたので、1ヶ月程度の間に国内に現存する…

使用済み未成線橋梁

下北半島を北上しているとき、未成線である大間線の遺構がいくつか目に入った。用務からの帰り道、その中で最もインパクトがあったアーチ橋に立ち寄ってみた。威風堂々たる7径間連続のコンクリートアーチ橋だ。この橋のことをネットで調べてみると、二枚橋…

萩のツインタワー

山口県に行く機会があり、これまで行ったことがなかった萩にも立ち寄ってきた。とは言え、近代建築を少し見ただけで、有名な城下町には全く立ち寄ることができずに終わってしまった。その代わりにと言ってはなんだけど、ほぼ予備知識が無い状態にもかかわら…

廃墟になった塔

僕はかつて新札幌の職場に勤務していたこともあり、JR千歳線の車窓から「北海道百年記念塔」を日常的に眺めていた。もちろん、旭川に住んでいた小学生の時も含めて、過去に数回訪れたこともある。鮮明な記憶が残っているわけではないけれど、そこにあって当…

技術革新が奪った仕事

先日FBを見ていたら、友人が近所の廃料金所ブースを紹介していた。この近くはたまに通っていたはずなのに、いままで気付かなかった。自分の不明にちょっとした悔しさを抱きつつ、あらためて通勤時に寄り道してみた。 実際に稼働している自動精算機レーンの隣…

大型複合トマソン物件

秩父の道の駅に立ち寄った際、視界の端に気になるものが飛び込んできたので、フラフラと近づいてみた。それは「純粋橋」と言っても差し支えないトマソン物件だった。もちろん、一見してかつて鉄道を跨いでいたのだろうことは推測できたのだが、見れば見るほ…

廃墟の格

沖縄に来たからにはグスク(城)の石垣を見なければと思い、世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」にも指定されている中城城跡(なかぐすくじょうあと)に行ってきた。沖縄本島の東西の海を両方望むことができる稜線に沿って構築されていた城郭群は、…

いけす遺跡

昨日は10人乗りのレンタカーで津田沼の職場を朝9時に出て、房総半島の太平洋側の勝浦市を訪問し、夜9時に職場に戻った。そのうち往復の移動時間はたっぷり4時間。地元の方々は首都圏から遠いと自嘲的に語ることが多いが、時間距離があるからこそのメリッ…

湖に沈む発電所

3年前の伊佐訪問時には立ち寄ることができなかった「曽木発電所遺構」を、ようやく見ることができた。鶴田ダムによる大鶴湖の水位が上がると、その大半が沈んでしまうという産業遺構だ。すでに観光対象として認知されていることもあり、倒壊を防ぐために各種…

舟の行方

『100均フリーダム』の著者である内海慶一さんの「唐突感こそが、香川県立体育館らしさなのだと思う。」というツイートを見て、「しまった」と思った。丹下健三によるこの体育館は3年前に立ち寄ったことがあるのだが、屋根構造を反映した奇抜で圧倒的なフォ…

遺跡の見せ方

夏のアルプスツアーの目的のひとつに、Marte.Marte Architektenによる橋があった。調べているうちに、どうやらローマ時代の遺跡を絡めた「Freilichtmuseum Römervilla」なる耐候性鋼板でつくられたモニュメントがヒットしたので、ついでに見に行ってきた。こ…

世界遺産のお手入れ

地域を代表する産業遺産の保存活用は基本的に大賛成なので、先人たちの努力によって維持されてきた富岡製糸場には大きな興味がある。2007年に一度訪問した際、社会的背景なども含めてなんとなく理解したので、2014年に世界遺産登録されたことは、素直にうれ…

保存とは

高岡は江戸の初期から鋳物の街だったそうな。なるほど、それが現在のアルミ産業に引き継がれているわけだね。その記憶をとどめている金屋町をふらりと歩くと、北端の方に気になるものがあった。案内板には、旧南部鋳造所の鉄を溶かすキューポラとそれに付随…

ローマ人の仕事

ローマ人が二千年前につくった南フランスの水道橋「ポン・デュ・ガール」のアーチを下から見ると、つくりが異なる石橋が並んでいることがわかる。写真の左側(上流側)がローマ人の手によるオリジナルであり、右側(下流側)がナポレオン3世の命による修復…

要塞ホテル

「ヨーロッパのドボクを見に行こう」という本をつくって広報活動をしていたら、当然のごとく自分がヨーロッパにドボクを見に行きたくなり、いてもたってもいられない状態になった。なので現在、またまたオランダを訪問し、再訪地を中心にしながらも新規のネ…

新規廃墟のその後

オランダのマーストリヒトの近くをかすめるベルギーのアルバート運河に架かる、ローラン・ネイの手によるユニークな橋梁「Vroenhoven橋」については、過去記事(移動しまくり)で触れた。橋梁本体の竣工年は2009年だが、2011年時点では周辺の整備が済んでい…

新しい廃橋

スイスを流れるローヌ川に架かる歩道橋。シエルという街の工業団地付近にある。正式名称がよくわからないので、Structuraeに倣って「イル・ファルコン歩道橋」と呼んでおこうか。1998年完成とのことだが、2011年の夏に訪問した時点でもまだ使われていなかっ…

ローマン・インフラ

ローマの繁栄はインフラ整備が鍵だったという理解は、まあ正しいと思う。「全ての道はローマに続く」と言われるように、有事の際に軍隊そのものや必要な物資を素早く移動できる舗装された交通インフラは、平時には交易の要にもなったりして、広大な国土の動…

エネルギーの廃墟

先日の福島訪問では、「いわき市石炭・化石館」や「みろく沢炭鉱資料館」を含めた常磐炭田関連の施設を、いわきヘリテージツーリズム協議会の方々から丁寧なご解説をいただきながら、駆け足で巡った。 その中でも最もビジュアル的な迫力があったのは、「常磐…

輪になって踊ろう

フランスの南部を巡ったときにはアヴィニヨンにも立ち寄ったのだが、もっとゆったり味わうべき街だった。ここの歴史地区は世界遺産にも登録されているってのに、ほとんど駆け足でバタバタしちゃっただなんて、実にもったいないよね。でもさすがに「アヴィニ…

古墳的格納庫

房総の茂原にはかつて、海軍の航空基地があった。その明確な証拠とも言える『掩体壕(えんたいごう)』というコンクリート造の航空機格納庫が、10基ほど残されている。倉庫として使われているものもあるが、ただそこにあるだけのものも多い。上の写真の掩体…