はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

認識

壁の観察

数年前に山口市民会館で観察した壁。天端に降った雨水が流れる様子が可視化されている。 一番上に当たる最初の鉛直面は全体的に風雨に晒されているためか、比較的均質にグレーの色がついている。斜めの面になると、その切り合い点でいったん水が溜まり、ある…

世界を感じる近代建築

先週末は、『日常の絶景』刊行記念トークイベントをするために、学芸出版社がある京都に行ってきた。その際に、倉方俊輔さんによる『京都 近現代建築ものがたり』に掲載されている建築物をいくつか見て回った。背後にあるストーリーを踏まえた建築体験は、予…

ゆらぎ

常願寺川の中流域にあった、災害時に出動するのであろうコンクリートブロックたち。砂防の聖地である立山カルデラが源流のひとつであるだけに、もしもの時の備えも気が抜けない。だからと言って、ビシッと完璧な隊列を組んでいるのかと思いきや、ちょっとし…

寄り添う

リサイクルボックスの観察は、そこそこ頻繁に行っている。しかし、この二人の愛おしさを超えるものにはなかなか出会わない。 なぜか傾斜がついている場所に置かれて斜めになったリサイクルボックスが、きっちり水平を出してしっかりと佇む自販機に、そっと身…

至高の斜張橋

昨年の晩夏、いくつかの偶然が重なったことで、しまなみ海道の多々羅大橋を見に行くことができた。1999年の供用開始から、いつか行かねばならないとずっと思いつづけていた、あこがれの斜張橋。僕の中では世界一かっこいいのではと、密かに思っていた。 やは…

体験で引き寄せる歴史

最近、あらためて「近代デザイン」の歴史を時間軸に沿ってざっくり俯瞰する機会を得た。というか、そうせざるを得なくなった。その過程の中で、昨年末に訪れたイギリスでの体験をしばしば振り返っていた。なんせこの国は、近代デザインの源流である産業革命…

社会の積層

東京は「レイヤード・シティ」と表現してもいいんじゃないかとずいぶん前から思い込んでいるわけだが、KITTEの屋上庭園にふらりと立ち寄った際にその思いを強く抱いた。ちょうど、東京の運河クルーズでの体験と同じような印象と言えばいいだろうか。スケール…

グランプリファイナル会場

まさに現在トリノで行われているフィギュアスケートのグランプリファイナルをテレビでチラ見して、この会場に行ったことがある気がした。確認してみると、たしかに2011年に訪れていた。たまたま脇の道を通った際に、シェル構造の屋根と赤い壁面が印象的だっ…

至高の視点場

昨年の3月、大手町と神田の間に「竜閑さくら橋」という歩道橋が架けられた。昭和につくられた首都高の間を抜けて、大正につくられた鉄道橋に近接しつつ、江戸につくられた日本橋川を跨ぐという、超絶複雑な都市環境を明快にクリアしていることは本当にすごい…

ハーフ構造風

萩から川を上るようにドライブしていると、木々の隙間からチラリと赤い鋼橋が見えて、うわっと色めき立った。なんだこれ?トラスをアーチで補剛しているのか?まさかあのランガートラス橋というやつか??などと、ざわつきながら近づいてみたのだが、トラス…

勾配の可視化

地形の起伏を意識する際には、比較対象となる水平面が存在しているとたいへんわかりやすい。連続した傾斜を持つ実際に近いジオラマ模型よりも、スチレンボードを積層したコンター模型のほうが、地形を読み込む検討には適している。 棚田や段畑のようなスケー…

囚われのドロイド

これらのリサイクルボックス群の見え方は、人によって微妙に異なると思う。僕の場合は、ジャワ族によってサンドクローラーに囚われたドロイドたちに見える。そうでなくても、多くの人はハリウッド映画に登場するロボ的な何かを想起するんじゃないかな。そん…

向き合う姿勢

複雑なものや巨大なものは、一度だけではその見どころがわからないことが多い。直感的にすごいと感じても、圧倒されっぱなしになってしまい、下手をすると鑑賞する姿勢を放棄してしまいかねない。対象を自分の中に取り込むための思考がついていかない対象こ…

消える橋

最近、あちこちで長崎の「出島表門橋」が話題になっている。日本の橋梁界で最も権威がある土木学会の「田中賞」も受賞しており、以前から見に行かねばと思っていた歩道橋だ。国指定史跡である出島の復元に関する事業の一環で、ネイ&パートナーズジャパンの…

室外機コレクション

先月の上海訪問でも、いくつか室外機コレクションを鑑賞した。自分史上、上海と室外機は切っても切れない関係にあるのだ。上の物件は、個別の室外機のバリエーションが豊富で、配置には粗密があるというのに、全体的に整った伸びやかな印象をもたらしてくれ…

図面的理解

スナップ写真などと違い、建築写真は水平や垂直がビシッと補整されることが多い。言い換えると、網膜上に投影される像とはずいぶん異なる「理想状態」が示されていることが多い。もちろん、良し悪しや好き嫌いの話ではない。人為的に構築された環境がどのよ…

でかすぎる地形模型

地形も楽しいけど、地形模型はもっと楽しい。鳥の視点というか、神の視点が得られる気分になるからだろう。ものごとを俯瞰的に眺めて全体像を捉えることができたときは、地形に限らず、うれしさとともに理解を手に入れた気になるもんねえ。 ところが、全貌を…

嘉瀬川くん

逆三角形に配置された三点があると、人の顔に見えることがある。これは「シミュラクラ現象」という言い回しで広く知られている。 佐賀県にある嘉瀬川ダムのオリフィスゲートと空気管らしき2つの丸い穴は、いかにもそれっぽく感じられる。しかも、( ゚ロ゚)ハッ!!…

街の記憶

1ヶ月ほど前だったろうか。自宅の最寄駅のロータリーに隣接した一角が更地になっていた。生命保険の会社のビルだったと思うのだが、どんなビルだったか全く憶えていない。 日本において、多くの人に利用されている駅前の風景は、更新し続けているように思う…

構造の理解の仕方

多少なりとも橋梁設計に触れていた身からすると、映画や漫画の世界に登場する橋にびっくりすることがある。例えば、メインケーブルが切断されているのに全体が崩落しない吊橋、中央の橋脚によってやじろべえのようにバランスを保っているアーチ橋、橋脚なし…

世界遺産へ

世界に点在するコルビュジエの建築群が世界文化遺産に登録されることになった。建築家や建築物の基礎知識に乏しく、世界遺産は旅先のついでに見る程度の認識しかない僕であっても、やはり近代建造物ファンとしてうれしい話だね。 上野の国立西洋美術館の個人…

更新履歴の可視化

これまで何度も高岡を通過したのだけど、落ち着いて向き合う機会はなかったのだけど、ようやく街を散策することができた。やはり、内川や氷見と同じように、ダンメン天国だった。 その中でもびっくりした物件が上の写真。側面にダンメンが現れていることはい…

かわいらしい

「かわいらしい」というという言葉は、「かわいい」という言葉ほどではないにせよ、人によって感じ方や捉え方が大きく異なると思う。特に工場のような負の固定概念が入り込みやすい対象には適用しにくい気もする。でも、上の写真のような色づかいやその組み…

ドボクシャッハテスト

この写真がいったい何に見えるだろうか。 新興住宅地の家並みに見えた人は、無意識の中に幸せな家庭への強いあこがれがある。海外の墓地に見えた人は、遠い祖先のご加護を受けていることをもっと意識してこの壺を買うべきである。とか。 そんな感じで、土木…

コレクション大会

昨年末というか先週あたり、少し時間的精神的な余裕ができたので、過去に撮った写真の共通点をムキになって掘り起こしてみた。そして、それらの写真をハッシュタグをつけてツイートしまくってみた。例えば「ステキ倉庫」「ゴージャス避難階段」「室外機コレ…

量が生み出す価値

「量より質」はある場面では正しいと思うけど、それって結果の話なんじゃないかな。特に何かの価値を生み出そうとする場合、「量から質が生まれる」ことの方が正しいんじゃないかと思う。それどころか「圧倒的な量は、質そのものになる」という気もするな、…

異質な存在

都市の中には、異質さを禁じ得ない施設がたくさんある。例えば、巨大駐車場や物流倉庫や各種タンクなんかがそれに該当する。僕はそれらをなんとなく気にしていたのだけど、あらためて自分のアルバムを振り返ると、なにかのついでという状況で、かなりたくさ…

見方を変えるトレーニング法

ものの見方を変えるという行為は、様々な場面でとても重要になる。何かをデザインするときや、アイデアを生み出すときなどはもちろん、見方を変えることによって気分を高めたり、生活を楽んだりすることだってできる。吸収力が高い若い方々に向けて、僕は折…

やんちゃ都市

レクサスブランドのコンパクトSUVとして登場した「NX」のCMは、ロッテルダムの街が舞台になっている。ちょいちょい登場する斜張橋はもちろんエラスムス橋だし、最後の赤パンツのシーンはオランダ建築協会(NAi)だし。そして泡まみれになるシーンは、どうや…

愛せない橋

オランダには、かっこいいのかかっこわるいのかわからないのに、妙に引かれるデザインがたくさんある。つまり、自分の中にある「ものさし」で図ることができない価値を、混乱とともに突きつけられるのだ。それを繰り返していくと、自分の中の「ものさし」が…